15 命綱
「いいぞ
「るっさい! とっとと次いけ」
「はいはい」
無駄口の増えた暫定相棒の
ちょうど、風が背後をおして、柱にしがみつくあたしをサポートしてるが、同じ向きは数分と保ったことがない。逆風に代わってしまえば、後ろにいる大地ごと、マウントの外に運ばれてしまう。
「よし。つかんだ。大地来い」
柱から身を乗り出す。3メートル通路の斜め対面に2人がいる。部屋だったにしてはやけに大きな空間の柱だ。まだ追い風。あおられないように、半歩づつ、すり足で進む。足の裏全部がぺったり着いたほうが踏んばれるんだけど、風が強くなったり弱くなったりするから、つま先立ちや、かかとだけになって、ときどき滑る。
近づくにつれて弛んでいくロープは
「うっつぅっ」
そのままもたれるように崩れた。ちょっと痛いだけでたいしたことないけど、びっくりして、自分の態勢が不明に。見えるのは天井だ。床に、仰向けに倒れてるらしい。
「ちいねぇ!」
「這って来い!」
みっともないけど、立ち上がるよりも速いだろう。うつ伏せになろうと、身体をくるりと捻ったとき、風の向きがまた変わった。いままで一番強い風で、あたしは身体をすくい上げられた。
足が天井のほうへ、手が下に。まるでバク転でもしたような態勢となる。体操と違うのは、自分で着地コントロールができないこと。尻もちをつくように着地したが、回転した勢いが収まらない、風によって加速され、2回目の回転に突入し、3回目、4回目になったあたりから回数がわからなくなった。
結わえたロープに、ぐんっと、圧力がかかり、腹が締め付けられる。腸が口から飛び出そうだが、それでも速度は落ちず、ままぐるしく入れ替わる視界に、胸のあたりも気持ち悪くなる。
「ちいねぇ!」
「
「わかった……あちッ」
「俺もだよ、くっ……」
大地と
「……う……うぅ」
息も胸も、腹も。なにもかもが苦しくて、ぎゅっと目を閉じる。そして数秒。風が心地いいなと目を開くと。上には真っ青な空、下にはマウントを包んでる白い雲があった。
「う、うあわああああーーーーー! 落ちてる、落ちてる!!!」
死ぬんだ、あたし。手と足をばたばた動かしてるのは、無意識になにかをつかもうとしてるんだろう。恐怖する心の奥で、静かにそんなことも考えてる。
「暴れるな! 落ち着け!」
怒鳴る声に、ほんのちょっとだけ落ち着けば、背中に固い何かを感じた。見上げてみると、あたしを繋いだロープが、マウントの窓から出てるのがわかる。落ちてるわけじゃないのだ。
「ちい、ねぇ、じっと、してて……」
ずい、ずいと、音がするそのたび、締め付けてるロープから鈍い震動が伝わる。ひっぱりあげられてるのだ。あたしは、2人のおかげで命拾いした。
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