第5話 YouTubeと青い空

見つかった!


「あ゛ー、あ゛ーー、変なものがあーーーっ」

暗闇の中でその人は、ぶるぶる震える懐中電灯を僕に向けた。


翌朝、知らせを受けて休日のはずの間仁田さんが来ている。

岡崎さんは震えている。同じ仕入れ担当の間仁田さんは、

「わわわ、なんだこれ、わ、生きてる動いてる、わわわどうする〜」と僕を見て驚いたあと、ミミズクなんじゃないかと調べ始めた。


この騒ぎはすぐに社長にも伝わった。

もうだめだ。きっとまた森に返される。森に行ったら、もう生きていけないな。

このビルで生まれたのに──

なんでこうなるんだっ。

もう… 成り行きに身を任せるしかない。 煮るなり焼くなり好きにしたら─…


間仁田さんの急ごしらえの鳥小屋で、僕は眠れぬ夜を過ごした。岡崎さんにも謝りたかった。


数日後、昼間に広報の人が僕を見に来た。動画を撮られたり、いくつか質問もされた。僕はどうとでもなれ、胸のうちを好き放題にしゃべった。


さらに数日後。


「YouTubeに出てくれませんか」


ん?

なに言ってるの。


バックヤードに置かれた鳥小屋で悶々としていた僕の前に社長が現れ、言った。


有隣堂のYouTubeをどうするか、社長と動画プロデューサー、広報、多くのスタッフが協議を重ねていた。

社長の後ろには、数日前に来た広報のいくさんはじめ何人もの人がこちらをうかがっている。

とても嫌だなんて言えない。

僕は、「はい」と応えた。

小さい拍手の音がした。


「そうだ、それから名前は?」

「ぶ、ぶ…」 すかさず社長は、

「ブッコロー! うん、さすが耳が早いな」

いや、あの、ぶんちゃんって……


僕のフルネームは、社長から伝えられたR.B.ブッコローになった。

そして最後に僕は力をふり絞って言った。

「岡崎さんも、一緒に」


   * * *


今日は初めてのYouTube収録だ。その前に、久しぶりに屋上に出てみた。

殻から出て初めて見た青い空──

あの空と同じ空が、

広がっている。




*完*

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鳥物語(トリ・ストーリー) ─R.B.ブッコロー半生記─ 佐藤 里(さと) @shinohitotoki

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