第10話 友達

「う、んん」


 光の刺激を受けて私は目を覚ました。目を開けると目の前にはジンドーの顔が、あ、イケメンの時の彼だ。


「ジンドー……?」


「おはよう! なのである!」


 私、寝て? ここはどこ? そんな疑問を払拭するために、私は飛び起きる。

 今になって感じるフカフカとした食感で、寝かされていたのが、ベットの上だとわかった私は、改めて状況を確認した。


「ここ? どこ?」


 見慣れない部屋、ではあるがどことなく、整理された白いベットに、カーテンで仕切られた。空間はなんとなく、学校の保健室のような雰囲気を醸し出していた。

 近くで椅子に座っていたジンドーは答える。


「ここは、スターランドの中央救急室なのである!」


「てことは……私、気でも失って?」


「うむ!」


 頷く、ジンドー。

 そっか私、気を失っていたんだ、理由は言われなくてもわかっていた。あの化物だ。あの時、私がどうなったのかわからないが多分、あの化物に捕まりでもしたのだろう。


 唯一断言できるのは、目の前にいるジンドーが助けてくれたのだろうと言うことである。


「ジンドー、ありがとう……また助けてくれたんでしょう?」


「礼には及ばないのである!」


「怪我は? ないの?」


「おいおい! 界さん! ベットの上でぐっすりだった君に比べれば、吾輩なんて大したことないのである!」


「ほ、本当? よかった」


 ジンドーの言葉に私は若干の安心を覚えた。私は兎も角、ジンドーに何かあったら嫌だ。

 せっかく出来た友達なのだから。


 ─────────────


 そのあと中央救急室から私たちは出た。幸い軽い貧血であると診断された私は、特に軽い検査もなくそのままスターランドから退場した、


 なんというか、疲れた。今日はさまざまなことが起こりすぎた。

 しかし家には帰らなくてはあの誰にもいない家に。

 帰り道、私はジンドーにまたお姫様みたいに抱えられ空を飛んだ。


 夜になるのも近いからか行き道よりは寒いと感じる。

 もう少し厚着してくればよかったかなだと考えているうちに、私はジンドーから今回の事件の詳細を聞かされた。


「私を狙ってた?」


「うむ」


 そのジンドーの言葉に私は驚きを覚える。


「なんで? 私、何もしてないよ」


 前回、襲われた化物は、確か、私が生と死の境界を揺るがすような行動、つまり自殺を決行しようしたのと。

 それに加えてジンドー曰く、アガミ市が特殊な場所であることが原因だと言われていた。


 でも今回はどうだろう、例の人影の化物は突然出てきて突然、私を捕まえた。


「そう、逆になぜ突然出てきたのかそれが、おかしかったのである」


「どいうこと?」


「あのレベルの怪異。つまりあんな化物はそうそう出てくるものではない。なんらかの目的でもない限り、あんな人の多いところで結界を展開することもないのである」


 そして、何よりもとジンドーは続けた。


「あの化物は君を。なぜそんなまどろっこしいことをするのか答えは一つなのである」


「私を狙って……」


 なんで、と疑問が湧くだが、全く持って答えは出てこない。

 心当たりもないのだから、理由もわからない。

 単純だったが、分からないということが怖かった。


 どうして襲われるのか、なんで、私のことを知っているのか、不安はどんどん大きくなっていく。


「大丈夫!」


 そんな、私をジンドーは慰めるよう言った。


「例え君が連れ去られたとしても、吾輩は何があっても君を見つけるのである!」


「どうやって?」


「吾輩、奈落の悪魔ラフメイカー達は、涙や悲しみの気配を感じ取れるのだ! そのおかげで前回のあのカエルみたいなやつも! 今回の人影のやつの時も! 君を見つけられたのである!」


 そうなのか、私は感心してしまった。たしかになぜかジンドーは私の元に現れた、前回の化物の時もどうやってか、私の場所を突き止めた。

 追跡する手段があったのか納得だ。


「あ、勿論! 悪用はしてないのである!」


「わかってるよ、ジンドー」


 そういうとジンドーはホッと息を吐く。


「それにしても、涙の気配を感じ取るなんて……私なら泣き虫だから、いつでも見つけられるね」


 ちょっとした冗談のつもりだったのだが。ジンドーは真剣な顔つきで言った。


「な、泣き虫なのは悪いことじゃないのである! 卑屈になっちゃあダメである!」


 必死なジンドーが面白かったが私は、悪いことをしたなと思い。


「じょ、冗談だよジンドー」


「なんだ! ならいいのである! でもいいであるか! 泣きたい時は遠慮なく泣いていいのであるぞ! 吾輩が何回でも笑わせるから!」


 空を飛びながらフフンと、得意げに言ったジンドーはなんだか頼もしい。


「うん、頼りにしてる」


 私は本心は口にした。

 だからこそ。私も──。


「これからもよろしくねジンドー」


「うむ! まずは学校であるな!」


「……! そうだね!」


 大切にしなきゃと思った。私の唯一の友達を。

 空を飛びながら切る風はとても気持ちがよかった。

 

 ─────────────


 ──また、失敗したか。


 ──はい どうやら じゃまもの が いるようで


 ──ならば、次こそは失敗するな、貴様らは代わりがきくコマだということを忘れるでないぞ。

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