第8話

 コヤンイが、やってきた。


「しばらく会って・・・なかったのですね」

「そう・・・・」


 恋人なのに、しらばく会っていないというか、会う頻度が徐々に減ってきている。

 なぜか、不思議と不安にならないし、会いたいという気持ちすら薄れてきている。


「うち達、幼馴染なのですよね?」

「急に、どうしてそんなことを聞くんだ?」


「さあ、なんとなくなのです」

「コヤンイらしくないな」


 コヤンイの様子が、いつもと変だった。

 会いたくてしょうがないというように甘えてこないし、冷めたような感じだった。

 

 コヤンイとは幼馴染かつ、恋人だけど、長くいてもわからないことばかりだった。


 コヤンイと一緒にいる時間は減っていくのに、メイド三人と一緒にいる時間は長くなってきた。

 それでも、コヤンイは嫉妬する様子がない。

 

 俺も、コヤンイとどう接していけばいいのかわからないし、話題も見つからない。

 最初は毎日がデートに行きたくてしょうがなかったけど、今は月に一回行くか行かないかくらいだった。


 仕方ないから、ペットであるアズキと、仕事がなくて暇してそうなメイドのシェーモと遊ぶことにした。


「あたしを頼ってくれるのですか?」


「頼るわけじゃない。

ただ、暇つぶしをするだけだ」


 コヤンイといるより、メイド三人といた方が楽なんて、言えないしな。


 コヤンイとは、幼馴染のはずだけど、幼馴染じゃない気がする。

 幼馴染としての記憶がないし、人間世界にコヤンイなんていなかった気がする。

 だけど、付き合っていながら知らないなんて、言えない。


「シェーモだけに言いたいことがあるんだけど、いいか?」


「なんでも、申しつけくださいなのです」


「人間世界に帰りたい」


「急に、どうしたのですか?」


「最近は、違和感があって、真実を確かめるために帰るだけだ。

すぐに、こちらの世界にも戻ってくる」


「それは、危険なのです」


「だから、シェーモにもついてきてほしいんだ。

ダメか?」


「だめじゃないけど、あたしでいいのですか?」


「シェーモじゃなきゃ、だめなんだ」


 メイドの姉二人は、お城には絶対的に必要なので、ここを抜けての仕事なんてお願いできない。


「はいなのです。

一緒に行きましょうなのです」


 シェーモ、アズキ、三毛猫ボール、俺とで人間世界に向かう。

 ここで、少しずつ人間世界の記憶が蘇ってきた。


 俺の世界は、荒らされていた。

 ここが、僕の故郷・・・・。


「ここは、本当にガット様の故郷なのですか?」


「記憶の通りだと、間違いない。

これで、全部思い出して、これからはまた、目的を持って旅をしようと思ってる」

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