第7話

 桜魔法中学校というのは、異世界で難関校と呼ばれ、入学することが難しい中学校。

 一応、Zクラスまである、大所帯の学校ではあるけど、かなりの魔法の才能に恵まれないと、テストでいい点は取れない。

 桜魔法第一中学校が、異世界で二番目に難しい中学校。

 桜魔法第二中学校が、異世界で三番目に難しい中学校。

 桜魔法第三中学校が、異世界で四番目に難しい中学校。

 どれも、卒業できずに、途中で挫折する人もいるくらいだ。


「僕に、何の用があって・・・・」


「あたくしは、導きたいのですわ。

正しい道に」


「話が、全然見えてこない」


 子供のいうことだから、真剣に聞かないでおこう。 

 もしかしたら、ヒーローごっこの最中かもしれない。


「もしかしたら、異世界に迷い込んだのにも、理由があるのかもしれませんわ。

それを、思い出そうとしていますわね」


「それ以外に、何があるって言うんだ?」


「つまりなのです。

これが、本当に思い出していい記憶なのかということなのですわ」


「思い出してはいけない記憶もあるということ、か?」


「場合によるのです。

忘れていることにより、救われていることもあるのですわ。


君を生かすために、忘れているということもあるのです」


「全然、話が見えてこない」


 お子ちゃまが、どこからともなく表れて、何を言い出すかと思えば、思い出しちゃいけない記憶があるとか、いきなり何を言い出すんだ?



「何者かによって、記憶を封じられていることも考えられるのです」


 その言葉を聞いた瞬間、ある言葉が俺の中でフラシュバックをした。


「わしは、そなたを助けたい。

だが、そのためには、一時的に忘れてもらわなくてはならない」


 え?

 どういうこと?

 何だ、この記憶は?


「記憶が戻りつつあるかもしれないのですわ。


ここは、一人でいないことです。


城に戻るのです」


「ああ、朝になってからな」


 あのお子ちゃま四人が去っていたけれど、俺のフラッシュバックは止まらなかった。

 本当にフラッシュバックなのか、偽の記憶なのかはわからない。

 だけど、俺の頭の中で映像が出てくるのと、声もあるんだ。


「殺す・・・・・!

いじめっ子は、必ず殺す・・・・!」



 その言葉に、恐怖が走った。

 何を意味しているのかわからないけど、本当に経験したことがあるような気がして、こわい。


 次の日の朝は、宿を出て、王国に戻った。


 コヤンイは、来ていないようだ。

 俺たち、恋人はいつでも、どこでも一緒というわけではなく、気が向いたら一緒にいる感じの、ほぼマンネリに近いような男女関係だった。

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