10月30日 ブラックアンガスビーフのカルビ重、レモンケーキ

 ひたすら痛みに耐える一日だった。

 頭も、下腹部も、腰も、何故だか肩甲骨まで痛い。頼れるのはロキソニンだけ。

 昨日たらふく肉を食べたおかげか、出血量のわりに貧血にはなっていない。不幸中の幸いである。昨日この体調だったら、とても出雲には行けなかっただろう。


 立ち上がるのもしんどいもので、夕飯は夫に『ほっともっと』で買ってきてもらった。やはり肉が必要だろうということで、「ブラックアンガスビーフ~ 牛カルビ重(きのこ香る にんにく醤油ソース)」にした。

 私はオージービーフが苦手である。どうもあの臭みと固い肉質が気になってしまう。国産牛がやはり好きだが、アメリカの牛肉も悪くない。特にアンガスビーフは赤身が旨く柔らかい。アメリカン・アンガス協会が品質を管理し、認定制度を設けているのも効いているのだろう。この“お墨付き”に認められるのはアンガス牛の中でも二割ほどだというので、こだわりがうかがえる。

 この“お墨付き”ブラックアンガスビーフを使った牛カルビ重を、現在『ほっともっと』が販売している。別添のソースは、きのこ風味のにんにく醤油と焼肉ダレの二種があり、もちろん私はにんにく醤油にした。ネギがかからないのもポイントである。

 ごはんを敷いた上に並ぶカルビ。付け合わせは焼いたしめじと、素揚げのサツマイモ、ナス。上からたっぷりとにんにく醤油ソースをかける。カルビはあまり焼き目はついていないがさっと焼かれて柔らかく、甘辛いソースは素晴らしく合う。正直言って、ソースに入っているらしいトリュフソルトやポルチーニの風味は、必死に探してその気配をほんのり感じる程度なのだが、ベースのにんにく醤油が美味しいのでさほど気にならない。隅に大根おろしが添えられていて、さっぱりと食べることもできるのが嬉しい。肉汁とタレの染みたごはんが美味しいのも当然である。


 食後、風呂も入って落ち着いてから、隠岐で夫に買ってきてもらった『めにーでーる』の「レモンケーキ」を食べた。

 隠岐の中で人の住む島のうち最も小さな島、知夫里ちぶりじま。大阪で十年パティシエの経験を積んだ後、この島へIターンして牛の畜産とパティスリーを始めたという、パワフルなご夫婦の店である。本土から材料が届かなければ作れないものも多いため予約販売が中心だったそうだが、周辺では生ケーキを販売するおそらく唯一のパティスリーのため、週に一回ほど近隣の島へ運んで行って販売することもあるようだ。

 そんな『めにーでーる』の焼き菓子「レモンケーキ」が土産物としてJAなどに置かれたりしていると聞いたので、夫に買ってきてもらったのだった。

 レモンの木が描かれた可愛らしい箱を開けてみると、クグロフ型のケーキに白いグラサージュのかかった美しいケーキが現れる。切り分けた断面もすっきりと端正である。フォークを入れればほろほろと崩れやすく、口に含んだ食感も軽い。国産の小麦粉・てんさい糖・発酵バターを使ったケーキは風味豊かで、そこにほんのりと海士乃塩が効いて味わい深い。島のレモンはグラサージュに溶け込んでいて、それが最後に爽やかに香る。レモン系の菓子はケーキに果汁が混ぜられることが多いが、グラサージュにというのが良い。酸味も穏やかで食べやすく、かえって香りが引き立っているように思う。


 大変美味しいレモンケーキだった。痛みが癒やされてありがたい。

 

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