山の陰に暮らす

10月28日 汁なし担々麺と、クロモジソーダ

　なんとも無為に過ごした。

　近所の美味しいパン屋は、まだ休んでいる。

　昼過ぎに夫はまた休日出勤、それからオーケストラの練習へと出かけて行った。私は耐え難い眠気に引きずられてぼんやりと午睡をしてしまい、気づけば日も落ちていた。無為である。

　夕食を取ろうと思って一人、街へ出た。

　相変わらず道は暗く、でこぼこと荒れている。自転車のライトが広いもので良かったと心底思う。最初に向かった店は、ホームページ上では営業日だがグーグル上では休日で、どうやらグーグルが正しかったらしい。次に向かった店は、毎月最終土曜の「土曜夜市」に出店のため休みだった。なんだかもう考えるのも面倒で、そしてやはり悔しいので、そのまま「土曜夜市」へ向かった。

　前回行ったときは真夏で蒸し暑く、滝のように汗が流れるのでとてもゆっくり見てはいられなかったが、今は歩いて回るのにちょうどいい気候ではある。冷たい飲み物を飲むには寒くなってきたが。

　と言いつつ、なんだか気になったので「クロモジソーダ」を飲んでみた。どうも生薬の原料などに使われるクロモジが、島根の特産品の一つなのだという。それをシロップにして、クエン酸と混ぜてソーダ割にしたもの。ほんのりと森のような爽やかな香りが良い。クセは少なく、クエン酸も入っているのでほんのりとハーブの香るレモンスカッシュのようで美味しい。

　鳥取に『ホット・エアー』というラーメン屋がある。そこはなかなか行きづらいところに、入りづらい感じで建っているのだが、ミシュランガイドのビブグルマンにも載っている店である。その二号店『ホット・エアー2』という店が、松江市にあるのだが、ラーメンの優先順位が高くない私はまだ食べたことが無かった。今日二つ目に行ってフラれたのがこの『ホット・エアー２』なのだった。

　夜市ではちょうど角の良い位置に陣取っていた。メニューはラーメンではなく、「汁なし担々麺」「油そば」の二種。私は「汁なし担々麺」にしてみた。麺は全粒粉系の極細麺。トッピングにはキクラゲとカイワレ、スライスアーモンド、そして鉄鍋で温めてとろとろの豚のコンフィが乗せられている。ずず、と啜ってみて、麺のコシに驚く。細麺にはナッツ風味のピリ辛ダレがねっとりと絡み、外で食べるのにちょうど良い。そしてやはり、豚のコンフィが素晴らしい。チャーシューともちがう旨味と甘みが引き出されたコンフィは、思わず唸る美味しさ。

　などとやっていたら映画の同時視聴会に少し遅れてしまった。大変申し訳ない。コーエン兄弟の『ノーカントリー』。なかなか興味深い西部劇だった。