10月18日 パンケーキ、シンプル豚汁と、揚げ生麩

 多さと重さに耐えかねて、髪を切った。

 そのままを美容師の男性にも伝えると、「そうだと思います」と苦笑された。不精で申し訳無い。

 髪を洗うにも、乾かすにも、まとめるにも、もうどうしようも無かった。元々髪が多い方で、クセもある。それでも誰に会うわけでも無いから、つい放ったらかしにしてしまっていた。

 相談した結果、久方ぶりにボブヘアになった。顎を少し超えるくらいの長さである。ここから鎖骨に届くくらいまでが、私の髪質的に最もまとまりやすいはずである。

 それにしても軽い。実に軽い。頭の重みが半分になった気がする。秋風になびかせるのも悪くない。


 ついでにふらりと立ち寄ったカフェは今月でオープンから十周年だそうで、大いに賑わっていた。ふんわりとしたメレンゲ系パンケーキが売りの店である。正直に言えば、普通に美味しい、というレベル感だが、この手のパンケーキの店が周辺に無く、雰囲気も悪くない。堀口珈琲が飲める、という点も貴重である。そして何より、水曜日に開いている店がどういうわけが周辺に少ないのである。

 十周年記念パンケーキ、というものがあったので注文してみた。厚みのあるふわふわのパンケーキが二枚重なり、上にはカスタードクリームが塗られている。その上に乗せられた猫型クッキーが可愛く、手作りらしい美味しさ。添えられているのはチョコレートソースのかかったバナナ、マスカット、生クリーム、林檎のコンポート。これをとろふわのパンケーキと共に味わう。林檎のコンポートが思いの外美味しかった。紅茶のシロップで煮ているそうで、茶葉と林檎の香りが絶妙に混じり合い、上品な甘さで、生クリームとあわせてパンケーキと食べるとかなり良い。これだけで食べたい、とすら思ってしまうほどだった。


 美容院に向かうときには少し汗ばむくらいに日が照っていたのに、帰りには少し肌寒い。この寒暖差のせいなのだろうか。未だ体は本調子ではない。

 夕飯のメインはミールキットの「揚げ生麩」と決まっていた。私は生麩が好きである。その美味しさに開眼したのは、確か金沢だったか。しかしいまいち主菜にはしにくい食材な上、なかなか値が張る。そんな時にミールキットにおかずとして入っているのを見て、思わず購入したのだった。

 とはいえ、副菜は考えねばならない。スーパーのウェブチラシをめくってみると、豚こまが安いようだった。それならば、シンプル豚汁ができる。


 豚汁というと、人によって具材は様々だろうと思う。我が家では大根や人参、サツマイモなどを入れていた。具沢山な豚汁は確かに美味しい。しかしそれぞれを買って仕込むのはなかなかに手間である。そこで見つけたのが、究極にシンプルな豚汁のレシピだった。

 具材は豚こまとキャベツのみ。出汁すらもとらない。しかしこれで十二分に美味しいのだ。

 半割りにして芽を取ったニンニクの香りを油に移し、その油でキャベツを塩炒めにする。この段階でキャベツ特有の青臭さを無くしつつ、甘みと旨味を引き出していくのだ。キャベツがしんなりしてきたらニンニクを取り出し、豚こまを加えて色が変わるまで炒め合わせる。そこへ水を加えて沸騰させ、丁寧にアクを取る。最後に火を止めて味噌を溶かせば、立派な豚汁である。

 ここまで削ぎ落としてもしっかりと美味しいのが豚汁の凄さである。むしろ、シンプル故に、豚汁の一番良いところをすくい取ったような味わいですらある。ニンニクはほんのりと香ばしさが残る程度、豚とキャベツの旨味がぎゅっと詰まった汁のうまいこと。キャベツはその汁を吸ってくったりとし、豚こま肉も噛み締めるほどにジューシーである。

 このレシピを気に入って何度も作っているが、主菜と汁物の間のようなボリューム感も大変重宝している。


 主菜の揚げ生麩も、なかなか面白い美味しさだった。衣をつけて揚げた生麩はぷっくりと膨らんで、同じように揚げたジャガイモと共に甘辛いタレで和え、マヨネーズを振りかけ、大葉を散らしていただく。なるほど、ここまですれば立派な主菜である。タレの絡んだサクッとした衣、むっちりとした生麩の食感がなんともクセになる。

 豚汁と合わせて、しっかり満腹である。


 今日、母からショートメッセージが返ってきた。実に二ヶ月ぶりである。まだリハビリは始まったばかりだが、どうにかそこまで回復してくれたのだと、少し安堵した。

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