10月12日 開拓の詩

 なんとも爽やかな秋晴れ。

 なのに一日中、頭痛に苛まれていた。何故だ。熱は無い。でも明日以降は天気痛の予報が出ている。その前兆なのだろうか。


 夕飯はミールキットで鶏肉のカシューナッツ炒めを。

 最後に炒め合わせるだけ、というところまでして夫の帰りを待っていたが、今日はなかなか遅かった。今月は特に公私とも忙しいようだったが、先日のトラブルがあとを引いていて、少し残業が増えて来ている。ほぼ定時で帰ってこれるのが、地方勤務の数少ない利点だったのだが。東京では、時期によって日付を跨いで帰ってくることも珍しくない。

 今日はまた立て込んでいたのだと、疲れた顔の夫が言う。それならば甘いものを食べねばなるまい。そうだそうしよう。


 食後に珈琲を淹れ、いただきものの菓子を開けた。北海道土産の「開拓のうた」である。

 以前から人気のある『きのとや』の「札幌農学校」というクッキーがある。北海道大学の前身の名を関したそれは、素朴な見た目だが北海道の小麦とバターの味わいがとても美味しく、私も好きなクッキーだった。「開拓の詩」は、そこから派生して作られた新しい菓子である。

 見た目もあまり見たことがない形。クッキーを三枚重ねにして、その半分をチョコレートでコーティングしてある。手でつまむのにちょうど良い。

 まずはクッキーだけを齧ってみる。うまい。流石の美味しさ。しかしこれは元からある「札幌農学校」クッキーそのままではない。こちらも北海道産素材にこだわり、チョコレートに合わせるためのクッキーを新たに作り出したのである。少し塩気がありザクザクとした食感、しかし口の中でほろりとほどける儚さ。バターの風味もしっかりと感じる。このクッキーにかけられたチョコレートが実になめらかで、こちらも北海道産ミルクを使っているそうである。口溶けの良いチョコレートに包まれたクッキーは、三枚重ねであることで食感を増し、甘さと塩気のバランスも良い。

 文句なしに美味しい、新しい北海道土産だった。『きのとや』の味はやはり信用できる。


 菓子をつまみ、あれこれ話しながら夫もリラックスできた、はずである。私が菓子を食べたかっただけというわけではない。ないったらないのだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る