10月4日 『月ヶ瀬』の団子、『ウエダ』のワッフル

 本日も晴天。

 なんとか体調もマシになってきて、やらなければならない手続きもあったので外出することに。

 風はほどよくひんやりとして、ずっとこうならば良いのに、と思わずにはいられない。しかし陽射しを浴びながら自転車を漕いでいった結果、目的地に着く頃にはへろへろになっていた。軽い脱水か貧血になっていたのかもしれず、止まらぬ汗と吐き気、目眩が落ち着くまで、ベンチから動けなかった。座るところがあって助かった。


 折角出かけたので、映画館で『ジョン・ウィック:コンセクエンス』を観た。

 ジョン・ウィックシリーズの四作目である。前三作も観ている、はずなのだが、最初の二作はうっすら覚えているが三作目の記憶がすっぽり抜けている。まぁだいたいのことは本編前の「これまでのあらすじ」的なダイジェストが教えてくれたし、細部が大事なタイプの映画では無いと思う。

 結果、非常に満足だった。

 ジョン・ウィックという男の物語を一度終わらせるなら、こうなるしかない。それを存分に見せてもらった。

 アクションは勿論盛りだくさんで、あんまりにも混戦しているので洗練されているというよりは泥臭い。そこが良い。カメラワークもなかなか面白く、ゲーム『ホットライン・マイアミ』を彷彿とさせるシーンも。ドニー・イェンの仕込み杖さばき、真田広之の刀さばきは流石の一言。正直言って真田広之はもっともっと観たかった。やはり彼の動きは美しい。そして眼鏡もよく似合っていた。素晴らしい。

 今回はまた、様々な国を舞台にしていたのだが、そのイメージがことごとくデフォルメされていて楽しい。いわゆる「トンチキ日本」、トンチキパリ、トンチキベルリン、トンチキ貴族などなど、やりたい放題である。良かった。

 ストーリー的には「第一部・完」といった感じらしい。五作目の制作も始まっているらしいし、この先どんな展開になるのか、楽しみである。


 劇中のコンチネンタル大阪にも掲げてあった素晴らしい言葉がある。


「命は食から」


 心から同意する。だからこそ人は、美味しいものを食べるべきなのだ。

 というのは放言だが、鑑賞後の私は何か甘いものを食べたかった。しかし水曜日の松江は、飲食店がことごとく開いていない。開けていても人が来ないからなのか。昼食にも困るくらいである。

 そんな中でも開いていたのが、『月ヶ瀬』である。奥出雲の仁多米コシヒカリを使った団子が名物で、米粉ではなく米そのものから作った団子は、実に味が良い。松江の名物の一つと聞く。今日は煎茶団子と、季節限定のスイートポテト団子をいただいた。

 煎茶と抹茶が練りこまれた団子は美しいうぐいす色をして、爽やかな風味の煎茶団子。その上にはたっぷりのこし餡が絞られていて、ほどよい甘さがよく合う。モッチモチの弾力がありつつ歯切れも良い。定番には定番の良さがあるのだ。

 一方のスイートポテト団子は、ぷるりとつややかな真っ白い団子の上にサツマイモ餡が絞られ、その餡の表面を軽く焦がしてある。白い団子は噛むほどに米の味わいが深く、まったりとしたサツマイモらしい甘さと香ばしさが秋の風味である。

 今はちょうど新米を使っているそうで、いっそう食感が良い気がした。大変美味しい団子だった。


 夕飯はミールキットで作り、食後には夫と、もう一つの松江の名物を食べることにした。

 それが『ウエダの洋菓子』の「ワッフル」である。なんとこれが創業130年を超える老舗だそうで、松江市民に永らく親しまれているという。以前はいくつか支店もあり、マドレーヌなどの焼き菓子も作っていたようなのだが、今は本店を残すのみ。そして作っているのもワッフルだけである。どうも店主が高齢で、継ぐ人も無いらしい。

 一度は食べてみようと、映画の帰りがけに寄ってみた。知らなければ素通りしてしまいそうな、小さな店である。ショーケースの中には本当に、ワッフルだけが並ぶ。ベルギーワッフルの類ではなく、ふっくらとしたスポンジ状の生地でクリームを包む、ジャパニーズワッフルと呼ばれるタイプのものである。とりあえず二つ頼むと、フィルムに包まれたワッフルをビニール袋に直接入れて渡された。なんともダイナミック。

 その為、持ち運ぶ時に少しクリームがはみ出るなどの事故があったが、なんとかころりとした枕のような形は保っている。一口食べれば、無性に懐かしい。卵の味がしっかりとある、シンプルなカスタードクリーム。どこか和菓子のような、コク深い甘さ

のあるふかふかのワッフル。なんとも素朴な美味しさである。ワッフル生地が何かに似ているような気がして考えていたのだが、おそらく、どら焼きの皮である。それもかなり美味しいどら焼きの。ふっくらと柔らかいタイプの皮から、香ばしい焼き目を剥がしてスポンジだけにしてしまったような。などというと混乱させそうだが、私の中でかなり印象が一致した。このどら焼き風のワッフルにひんやりと素朴なカスタードクリーム、という組み合わせが良いのだと思う。確かにオリジナリティがあり、美味しい。結構好きである。


 期せずして松江の名物を食べる日になった。どちらも素朴な美味しさである。

 夫が首を寝違えて大変なことになっていた日でもあるのだが、今はいびきをかいて寝ているのでまぁ大丈夫だろう。

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