9月28日 フレンチトースト、あか牛のステーキと、グラタン・ドフィノワ

 空は極めて不安定。

 嵐のようなゲリラ豪雨が降ったり止んだりするのを少なくとも三度は繰り返し、そうかと思えばいつの間にか何食わぬ顔で晴れていた。ついていけない。


 昨日行ったパン屋では、実は食パンも買っていた。一枚は昨日のうちに普通にトーストしてみたのだが、かなりしっとりもっちりとした甘みのある食パンだった。バタートーストの個人的な好みからは少しずれるが、美味しい。

 これを一晩置いて、今日のブランチにはフレンチトーストにした。今回は既に甘みのあるパンということもあり、漬け時間は三十分ほど。しかし卵液はほとんど吸い込んでくれた。これをたっぷりのバターでこんがりと焼く。

 みっしりと厚いフレンチトーストはぷるりと柔らかい。香ばしいバターと、生クリームを加えた卵のコクの中に、パンの甘さが際立つ。そこにメープルシロップの風味が加われば無敵である。

 大変良いブランチだった。


 さて、正直体調はよろしくないが、今日はもう夕飯に作るものを決めてしまっていた。メインディッシュはいただきものの熊本あか牛のステーキ。これが昨晩からチルド室で解凍してある。

 積みゲーを崩しにかかる夫を眺めつつ、少しずつ料理を仕込んだ。

 まずはピーマンとキノコのマリネ。ガーリックオイルで焼き目をつけながら炒めたのを、ワインヴィネガーのマリネ液と和えて、粗熱が取れたら冷蔵庫へ。

 次に、グラタン・ドフィノワ。肉の付け合わせと言えば、やはり芋である。だがマッシュポテトは結構大変なので、何度か作って気に入っているこれにした。

 フランス南東部のドーフィネ発祥の料理で、簡単に言えばジャガイモのクリームグラタンである。当地のジャガイモはサツマイモに近い水分量をしている為、生のジャガイモをクリームと共にオーブンで焼いてちょうど良いらしい。それに比べると日本のジャガイモは水分が多いので、今回は先にクリームで芋を煮て中の水分を適度に飛ばしてからオーブンに入れる。

 解凍した熊本あか牛は、脂と赤身のバランスが良い。薄く塩を振ってから、フライパンで焼いていく。ステーキの焼き方は実に様々で、家庭用のフライパン調理にも限界がある。今回は調べた中から「三十秒ごとに裏返す」という方法を採用してみた。一度だけ裏返すよりも早く火が通り、結果として水分が失われずジューシーに焼き上がるのだという。ただし、あまり焼き目はつかない。

 焼いた肉をアルミホイルで覆って休ませる間に、肉から出た脂も使ってガーリックライスを作った。

 今回、ステーキソースは作らない。和牛のステーキには結局、塩やワサビ醤油が合う、という話を聞いたので試してみようと思ったのである。


 これらを全部並べてみると、テーブルがぎゅうぎゅうになってしまった。壮観である。

 ステーキにまず塩をつけて。これまたいただきものなのだが、新潟県の「笹川流れの塩」という、雑味なく非常にまろやかな、粒の粗い塩である。これが実に、肉の旨味を引き出してくれる。短時間で裏返した肉は確かにジューシーで柔らかく、中心はほどよくピンク色。ワサビ醤油もまた美味しい。山陰の醤油が甘めなのが和牛の肉質と良く合い、ごはんも掻き込んでしまう旨さ。

 箸休めにはさっぱりとしたマリネを。キノコの旨味とニンニクの香り、ほどよいピーマンの苦味が、ワインヴィネガーの酸味と溶け合い、口の中をリセットしてくれる。

 グラタン・ドフィノワは、思った通りにほっこりと美味しい。輪切りにした北海道産メークインは風味良く、クリームにはナツメグが香り、バターとチーズがとろける。仕上げの黒胡椒もぴりりとして、我ながら非常に良い出来である。

 それでもやはり、ガーリックライスは強い。牛の脂を吸わせ、こんがりとサクサクのニンニクチップ、あとはシンプルに醤油を回しかけただけなのにこの美味しさ。できたては特に、その香ばしさがステーキとも最高の相性で、たまらなく旨い。

 勿論、すっかり満腹である。


 (夫の)夏休みなので、これくらい豪勢でも良いのだ。良いことにする。

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