9月20日 和バターサンド
やはりここは、空気が重い。
雰囲気の話ではない。気圧などの体感である。
こうして短期間に東京と山陰を往復したことで、より一層それを感じる。東京での私は気を張っていたのかもしれないが、心身共に万全で無いながらももう少し体は楽に動いていたはずである。今は体に重りがついているよう。
そんな自分も嫌になってしまって、余計に良くない。思い出すのは母である。母に比べれば健康体なのに、どうして私は頑張れないのか。蹲ってそんなことばかり考えてしまう。実に良くない。
休み明けの夫は、家に財布を忘れて行ったり、車に携帯を置いてきたりと、なかなかぼんやりしていたようである。最近になって夫も天気痛の気が出てきたので、そのせいもあるかもしれない。仕事も忙しくなってきた模様。お疲れ様である。
夕飯はそんな夫に、また弁当を頼んでしまった。申し訳無い。作りたい気持ちはあるのだが。
食後、気力を取り戻す為にも、東京で買ったお菓子を食べた。『八 by press butter sand』の、和バターサンドである。
お菓子好きの方なら『プレスバターサンド』に聞き覚えがあるかもしれない。バターをたっぷりと使ったサブレを特別なプレス器で「はさみ焼き」にし、バタークリームとバターキャラメルを挟んだ、なかなか濃厚なお菓子である。定番のものも好きだが、東京駅など限られた店舗でしか食べられない「焼き立てプレスバターサンド」が、特に気に入っていた。勿論、山陰にいかなる『プレスバターサンド』も存在しない。
そんな『プレスバターサンド』が昨年新たに立ち上げたブランドが、『八 by press butter sand』である。ここでは「和と洋を越境する新しいニッポンのお菓子」として、北海道産小豆やきな粉など和の素材を使ったバター菓子を開発し、名前にも八百万、末広がりの「八」を関しているという。そもそも、通常のプレスバターサンドにも使われている「はさみ焼き」という製法は、和菓子に使われているものだというから相性には期待できる。その存在を知って以来、私はこれを食べる機会をうかがっていたのだ。
今回食べたのは、定番フレーバーの一つ「きな粉あずき」。和紙のようにグラデーションが美しいパッケージを開いた途端、ふわりと広がるバターの香りが嬉しい。通常のプレスバターサンドは正方形のサブレだが、こちらはコンセプトに合わせて八角形。見た目にも良い十字の筋が、みっしりとしたサブレを適度に割りやすくしているのは共通である。齧ればサクッと香ばしく、口の中でほろりと崩れる。バターがじんわり滲むサブレだが、きな粉の風味がしっかりと感じられる。使われている国産きな粉はコク深い黒豆きな粉と、時間をかけて焙煎した京風きな粉の2種だそうである。きな粉の香ばしさはそのままに、独特の粉っぽさをバターと米粉がちょうどよく調整してくれている。サブレの間に挟まれているのは、北海道産の大納言あずきを使った甘納豆がたっぷりの、あずきバタークリーム。こちらは思ったよりも随分ふんわりと軽く、甘さは控えめ。きな粉サブレとの相性は言うまでもない。この上品なバランスが絶妙である。
これは確かに、緑茶にも珈琲にも合うタイプの新しいお菓子である。今回は買っていないが、バタークリームの挟まったどら焼きや大福も食べてみたい。
お菓子のおかげで少し回復したが、こんな時間になってしまった。
そしてどうやら、母の手術日が決まったらしい。良い方へ向かうことを祈る。
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