9月11日 牛骨塩ラーメン、きのこ弁当

 昨日は日記を書いた後、夫と合流して鳥取方面へ向かった。特に目的は無く、ただ何をするにも中途半端な時間だったので、とりあえず車を走らせていた。

 道中、私の「興味のあるところリスト」を眺めているうち、満を持して牛骨ラーメンを食べに行こう、ということになった。


 ラーメンの出汁といえば鶏ガラや豚骨、煮干しなどと様々だが、鳥取県の中西部では牛骨でとるのが一般的である。その起源には諸説あるようだが、食用以外の荷役や農作業用の牛について、鳥取の辺りが一大産地であったことや、古来より大陸とのやり取りがあったこと、鶏ガラなどより長い時間煮出しても出汁が取れること、などが関連していそうである。

 私はそもそも、ラーメンにそこまで興味があるわけでは無い。嫌いではないが、結構な猫舌なのと、ネギが嫌いであるのが主な理由である。ラーメンが好きなのはむしろ夫の方で、しかしその好みはガッツリこってりとした家系ラーメンのため、比較的あっさりしていそうな牛骨ラーメンにはそこまで食指が動かなかったようである。島根には家系ラーメンの店がさっぱり見当たらず、夫はしばしばそれを嘆いていたりする。

 だがこの日は、映画の後で遅めの時間にランチを食べたのと、山陰でしか食べられないものについては食べておかなくては、と思っていたことから、候補にあがってきたのだった。

 向かったのは米子市の『ラーメン悟空』。地元民に人気のある店らしく、「お肉を愛するラーメン屋」を標榜している。日が落ちかけた六時過ぎに到着したが、店内は満席、我々は待ち列二組目だった。期待が高まる。

 システムはしっかりデジタル化されていて、受付機だけでなく、注文もQRコードから客のスマートフォンなどでメニューを選ぶ形式。最適化されている人気店である。待っているうちになんだか気分が盛り上がってしまって、ラーメンの他にも餃子やごはん物も頼んでしまった。

 最初に来たのは、「黒豚餃子」。生姜とニンニクとニラが強めに香るが、それにも負けない豚の旨味が素晴らしい。

 続いて、私の頼んだ「牛骨塩ラーメン」。透き通ったスープの中に中太麺、ネギ、モヤシ、メンマと、大きなチャーシューが一枚。私はここに、煮卵を追加した。まずスープを飲んでみると、かなりダイレクトに牛骨の旨味を感じる。塩なので味としてはあっさりとしているのだが、深いコクと、牛らしい独特の風味がクセになる。テールスープにある風味をもっと濃くしたような。これはうまい。煮卵はあまり味が染みていないタイプで、塩ラーメンにはなくても良かったかもしれない。そしてチャーシューの美味しいこと。豚バラは脂も身もとろりと溶けてしまいそうな柔らかさで、口の中にほどけていく風味の良さもたまらない。

 私が美味しさに感動しているところに、夫の「チャーシューメン」もやってきた。これは見た目がもうほぼ肉、という突き抜けたもの。牛骨しょうゆスープに麺とモヤシなどが入っているはずなのだが、モモ・バラ・トロの三種のチャーシューに覆われて全く見えない。スープが溢れることを前提に受け皿付きである。少し食べさせてもらったが、さっぱりとして噛みごたえのあるモモ、とろけるバラ、ぷるりとした脂と濃いめの味付けのトロ、とチャーシューは違った美味しさが楽しめ、牛骨しょうゆスープもパンチがあってうまい。

 そしてもう一品頼んだのが「トロ丼」である。これは厚切りのトロチャーシューを、チャーシューだれのしっかりかかったごはんの上に乗せたものである。それだけなのだが、見た目から期待した通りの美味しさがそこにある。笑ってしまううまさ。

 総じて、大満足だった。「お肉を愛するラーメン屋」を名乗るだけはあるし、牛骨スープは個人的にかなり好きな味だった。ラーメン好きな方には一度食べてみていただきたい。


 腹を満たした後には、皆生温泉の日帰り入浴施設「オーシャン」へ向かった。施設内は何故かバリ風の装飾に溢れているのだが、塩気のある温泉で温まり、露天風呂からは何に邪魔されることなく日本海を眺めることができる。綺麗な設備が必要十分に整えられているのがありがたい。正直言って、泉質は島根県内の温泉の方が良いと思う。しかしどこも小さく、古く、共同浴場のような趣きのところが多い。それはそれで風流、かもしれないが、実際は改装などをする費用が無いだけである。


 といったような、なかなか理想的な日曜日を過ごしたのだが、今日はまた雨降り。しかも悪夢に魘されて、私の唸り声で夫を起こしてしまったらしい。申し訳無い。

 なんとも頭も体もぼんやりとしてしまって、また何もできない日になってしまった。夕飯はほっかほっか亭で「きのこ弁当」を買ってきてもらった。きのこの炊き込みご飯が美味しい。気力が湧いたら、我が家でも作りたいものである。


 今週こそは色々やりたいと思っているのだが、どうなることやら。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る