9月5日 クラフトコーラサワーと、ラクサ風ごはん

 今日の島根はまぁ大変な空模様で。

 朝から降り続く雨は電車を止め、大雨警報が洪水警報と土砂災害警戒を呼び、一度注意報に戻ったと思えばまた警報に戻った。落ち着かない。山も川も海も近いとすぐこうなる。

 こんな日に、我が夫は島根の西端まで泊まりがけの出張に出かけていった。それはそれはひどい旅路だったらしい。可哀想に。


 こんな天候だと体調は決してよろしくない。よろしくないが、昼過ぎから酒を飲むことにした。折角なので。

 早めの夕飯兼ツマミとして、ラクサ風のごはんをミールキットで作る。本当は夫と食べるはずだったのだが、出張が急に入ってきた上、期限が今日までなので仕方ない。

 ラクサというのは、スパイシーな東南アジアの麺料理を言う。どうも地域によって同じ名前でも違った料理になるようだが、今回はシンガポール風。エビの出汁にココナッツミルクを合わせ、香辛料を効かせたスープである。これを本来は、麺と共に食べるらしい。

 実のところ私は本物のラクサを食べたことはないのだが、ラクサ風の炒め物をまず作ってみる。

 野菜を蒸し焼きにし、炒めておいた豚肉を合わせ、パックに入ったラクサソースと炒めていく。これをごはんの上に盛り、ついでになんとなく、半熟玉子も乗せてみた。

 エビがしっかりと香りスパイシーなソースは、北インド系のプラウンマサラに風味が似ている。考えてみれば、原材料が似ているので当たり前なのだが。しかしメインになるのはジューシーな豚肉とシャキっとしたモヤシやニラなので、なかなか面白い組み合わせである。ごはんにもしっかり合う味わい。とろりと黄身の流れる半熟玉子を乗せたのは正解だった。途中、味をまろやかに変えてくれる。

 そしてこのエスニックなごはんに、クラフトコーラのサワーがすこぶる合うのだ。コカコーラなどとは違う、カルダモンやシナモンなどのスパイス感がちゃんと残るコーラのリキュールを、炭酸水で割ったもの。このぴりりと爽やかな味が、ラクサと大変相性が良い。


 そうして酔っ払ってどうするかというと、“推し活”である。

 東京の友人が、山陰へ越す前に貸してくれたDVD集があり、それをじっくりたっぷり観ようというのである。四セットも貸してもらったのだが、今日観るもので最後なのだった。

 推しに狂っている様を夫に見られるわけにいかない、というのもあるが、このDVD、1セットが五時間くらいのボリュームがある上、つい巻き戻して繰り返し観るシーンが出てきたりなどして、鑑賞するのにかなり時間が必要なのだ。心情的にも、一晩かけて心置きなく向き合いたい。そんなわけで、夫が不在の夜は“推し活”のチャンスなのだった。

 おお、推しよ。東京ではこの目で間近に見た推しよ。様々な苦難を乗り越えて来た推しよ。この尊さで残りの山陰生活をなんとか乗り切れる気がする。乗り切らねばならない。生きて東京でも“推し活”をするのだ。愛しさと切なさと心強さを感じずにはいられない。


 よし、思ったよりまだ時間があるので、最推し回をもう一度観ようと思う。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る