8月27日 万惣風ホットケーキ、豚とキャベツのくたくた蒸し

 今日は久しぶりに、一からホットケーキを作った。つまり、薄力粉をふるうところからである。


 かつて、秋葉原と神田の間に『万惣』というフルーツパーラーがあった。果物類が美味しいのは勿論だが、一番の看板メニューはホットケーキだった。銅板でじっくりと厚く焼き、つるりときれいな丸にバターを滑らし、黒蜜をかけていただく。そのふかふかとした食感、さっくりとした表面、絶妙な甘さ。その全てが伝説で、あれはホットケーキの理想形の一つだと思う。かの池波正太郎も足繁く通ったと言われる名店だった。しかし老舗ゆえか、ビルの老朽化に伴い、2012年に幕末の創業からの歴史を閉じることになった。

 その味を引き継いだ店が、幸運なことに東京にはいくつかある。皆、あの味を一度食べたら忘れられない、忘れたくないのだ。私も赤坂の『Fru-Full』や蒲田の『シビタス』にしばしば通ったものである。だが山陰にいてはそれは、叶わない。

 だが、酷似したレシピが実は公開されている。NHKの製菓番組『グレーテルのかまど』の「池波正太郎のホットケーキ」がそれである。この時代に感謝である。


 そんなわけで、万惣風のホットケーキがどうしても食べたい私は、衝動にかられてしばしばこのレシピで作っているのである。が、今回は別の番組で小嶋ルミ氏が言っていたことも取り入れてみた。

 卵と牛乳、サラダ油にはちみつを加えてしっかりと混ぜてから、粉類をふるい入れる。それを混ぜるのだが、膨張力を潰さないように、泡立て器を垂直に持ち、混ぜ過ぎないように回す。ダマになってしまうのが怖くて、これまで混ぜ過ぎていたかもしれない。

 さてこれをフライパンで焼くのだが、最初は蓋をしてじっくり蒸し焼きに、裏返した後は蓋を外して焼いてみた。こうすることで火の通りが均一になりやすく、さくっとした食感も失われないはず。

 結果、かなり完成度は上がった。

 どうも今のフライ返しがよく無いらしくひっくり返すのにはことごとく失敗したのだが、しっかりと膨らんだホットケーキはふわふわで、万惣らしい底のカリッと感も再現されている。バニラオイルも入れているので甘い香りもしっかりとある。だいぶイメージに近い。

 銅板には敵わないが、家で焼くホットケーキとしてはかなり満足である。また作ろう。


 午後には買い物に出た。

 狐の嫁入り、というには激しすぎるゲリラ豪雨にあったりもしたが、帰宅後に夕飯をつくる。

 今夜は「豚とキャベツのくたくた煮」。コウケンテツ氏のレシピである。

 フィリピンで振る舞われた料理を参考にしているというこの一皿、なかなかに豪快で、素朴で、美味しいのだ。半玉のキャベツを芯が横になるよう垂直に置き、ザクザクと切っていく。この切り方によって、キャベツが柔らかく甘くなるのだ。豚バラは脂を引き出すように薄切りのニンニクと共に鍋で炒め、一度取り出す。鍋にたっぷりのキャベツを敷き、底の脂を軽く絡め、その上に肉を重ねる。その後は蓋をしてじっくりと蒸すだけである。

 塩を強めに振って和え、仕上げには黒胡椒もしっかりと振る。ほとんどが素材の旨味という料理である。二人で分けても皿にこんもりと山ができるが、シンプルながら奥行きのある味わいでぺろりと平らげた。キャベツはくたくたに柔らかく甘さがぐっと引き立ち、表面はこんがりとした豚バラも固くならず、ジューシーそのもの。

 家庭料理は手軽で美味しいに限る。


 さて、この後は夫がオンラインで飲み会だというからゆっくりしよう。

 

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