8月12日 ハンバーグカレー、牛めし

 曇りがちな晴れ。

 体調は一旦持ち直したので、外出することに。


 昼食を食べに出かけた先の、一軒目は臨時休業でフラれ、二軒目でハンバーグカレーを食べた。

 辛さは控えめな、とろりと具の溶けたカレールゥ。トマトのかけらが見え、その酸味と甘みがあるようにも思う。ハンバーグはしっかりと大判で、こんがりとした焼き目が美味しくジューシー。そのハンバーグの上には表面を焦がしたチーズが乗り、コクとまろやかさを加えてくれる。

 これにサラダとキャベツの味噌汁、食後の珈琲も付く。ほっとする美味しさのカレーと、物腰の柔らかい接客に癒やされた。


 腹を満たした後は、山で汗をかく。

 出雲市にある一畑寺、通称・一畑薬師。島根に来て以来その名は耳にしていたが、参拝するのはこれが初めてである。

 その為、この寺が山の奥深く、こんなにも山道をぐるぐると登った先にあるとは知らなかった。今年の大雨のせいで通行止めになった区間があり、迂回路を通ったせいもあるだろうが、結構な道を通っていった。

 日は照っているが、吹く風には涼やかさがある。境内までの道には鄙びた土産物屋があり、看板犬と思われる二匹の柴犬が軒下で舌を出しながら笑っていた。数メートルおきに何故か目玉おやじのブロンズ像があって不思議に思っていると、水木しげるに妖怪やお化けの話を語って聞かせた“のんのんばあ”が一畑薬師を熱心に信仰していた縁なのだという。

 急な階段を何段も登って、汗を拭きつつ参拝する。

 一畑薬師の創開は、平安時代の寛平六年(894年)。漁師の与市よいちが引き上げた薬師如来をご本尊として祀ったのが始まりで、与市の母親の目が開いたり、戦国の世に幼児が助かったことなどから、「目のやくし」「子供の無事成長の仏さま」として広く信仰され、薬師信仰の総本山とされているという。

 詳しくは伏せるが、遠方の家族が急な病に倒れていて、今は諸々の事情で会うことも適わない。せめて、と思い今回、参拝に至った。

 どうか早く、治りますように。


 その後は特に予定も無かったのだが、夫が急に「松屋が食べたい」と言い始めた。しかし本当に残念なことに、山陰に松屋は存在しない。最寄りを検索してみると、広島県の庄原と出た。

 車ならば、行けない距離ではない。

 二時間かからない程度で着くには着いた。中国道の七塚原サービスエリアの中である。ちら、とのぞいてみたが、なんだか味気ない。松屋に何を期待しているのか、という話ではあるが、なんだか松屋感が足りないのである。

 そこで、帰りに日帰り温度に入ることも考えて、福山まで行ってみた。さらに一時間ほど先である。

 果たして、福山東の松屋に我々はたどり着いた。黄色に青い字で『松屋』。とんかつの『松のや』も併設された店舗だったが、そちらの券売機には目もくれず、しばらくぶりの松屋のメニューをタップする。

 本当ならカレーと牛皿のセット「カレギュウ」を頼みたかったのだが、昼間のカレーが存外重かったので、スタンダードな牛めしの小盛りをネギ抜きで。清潔感のあるモダンな店内だったが、他の客との心理的壁が厚い、この独特の空気感も懐かしい。しばらくして自分の番号が呼び出され、念願の松屋の牛めしである。

 丁寧にネギを抜いてもらった、牛肉と米とつゆだけの牛めし。醤油をベースにした比較的あっさりとしたつゆ。極薄切りの牛肉は多少スジはあっても、その薄さでふんわりと柔らかい。そして素っ気なくも温かい味噌汁。これ、これである。求めていた松屋の味。

 牛丼ごときにそこまで、と思われるかもしれない。しかし馴染んだ味が恋しくて仕方なくなる時もあるのだ。たかが松屋、されど松屋である。

 松屋には一刻も早く、山陰への出店をご検討いただきたい。ついにサイゼリヤもできたのだから。


 そんなこんなで、福山東の海沿いにある、塩気たっぷりの日帰り温泉で汗を流してから、今が帰宅途中である。

 なんとも雑多な一日だったが、目的は果たせたので良しとする。

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