　朝から雨がしとしとと降っていた。

　病院へ行かねばならない。処方薬が切れたので、これ以上先へはずらせない。

　気合を入れて掃除をしたおかげか、昨夜は久しぶりに長く眠れた気がする。やはり夢は見たけれど、もう忘れてしまった。

　ぼんやりと身支度をして、外に出ると雨が強まっていた。ちょうど一番ひどくなる時間帯に移動することになってしまった。

　レインポンチョを頭からかぶって自転車を漕ぐ。辿り着く頃にはポンチョの中は汗でびしょ濡れになっていて、雨に濡れるのとどちらが良かったのか。しかし眼鏡と鞄が濡れないだけでも効果はあると思おう。

　私は運転免許を持っていない。という話を、この日記でしたことがあったろうか。この田舎の車社会で何故、だとか、今のうちに取れば良いのに、だとか思われるだろうし実際に言われてきた。今日のような日は特に、車移動が便利だろうと思う。しかし、私はあの車の運転に関する複雑な動作と、安全確認と、地図やルート確認とを、同時にできる気がしないのである。乗ったが最後、事故を起こす。周りの車が迷惑する。最悪、人が死ぬ。そう思うと、とてもハンドルを握ろうとは思えない。

　もう一つの理由として、私は寄り道がとても好きな質（たち）だから、というのがある。私は地図の読めない方向音痴だが、知らない道があると入りたくなる。そうして良い感じの店に巡り会ったり、妙な場所を見つけたりする。東京の方にしか通じないかもしれないが、一人で「モヤさま」をやっているのである。こんなことができるのはGPSとグーグルマップのおかげだが、車ではこういうことが気軽にできない。歩く体力には限界があるが、自転車ならば少し遠くまでいける。そんなわけで私は、専ら自転車を漕いでいるのだ。

　今日くらいバスを使おうかとも考えたが、バス停まで傘をさして歩くのが煩わしかったし、帰りに買い物をするのも億劫になってしまう。予報ではこの雨は、じきに止むはずなのだし。

　病院に辿り着いた私の姿はまぁひどいものだったが、馴染みのお医者に診察されるだけなので開き直る。話の面白い、しかし話の長い、良い眼鏡をかけたお医者である。いつも通りに、診察と関係のない話も様々にして終わった。

　会計をして外に出ると、雨はもう止んでいた。天気予報の通りだった。

　自転車の鍵を開けると、その瞬間に、鍵に着けていた根付がぷつりと切れた。大阪へ旅行したときに買った、“すみっコぐらし”の“しろくま”がカニを抱えた根付だった。その飾りは無事だったが、紐が修復不可能な形に千切れていた。なんとも遣る瀬無い。

　ランチを食べるほどの食欲は無く、しかし多少腹持ちの良いものを求めていた。ストックしている店のリストをぐるぐるとスクロールし、ワッフルを食べに行こうと思い立った。確かキャンペーン中で半額になっているのだ。

　行ったことのあるカフェである。シンプルモダンで清潔感のある、至って普通の店内。そのワッフルもまた、至って普通である。だが、焼き立てのワッフルというのはそれだけで美味しいもの。外側はサクッと、内側はふわっと温かい。今日はチョコバナナカスタードにしてみた。濃厚なチョコレートソースはきっとHERSHEY'S。久しぶりに食べるバナナはしっかりと甘い。バニラアイスの上には生クリームもこんもりと乗る。シンプルなワッフルには、カスタードクリームがよく合う。甘さと卵の風味を強めてくれる。

　アイスコーヒーを注文したが、冷房のきいた席だったのでホットの方が良かったかもしれない。ワッフルを食べ終わる頃には、服も髪もすっかり乾いていた。

　夕飯をどうしようかと、アイスコーヒーを啜りながら考える。ワッフルをしっかり食べておいて何だが、軽いものが良い。疲れもあるので、手間もかからないもので。

　チラシアプリは様々あるが、近所のスーパーは対応したアプリがバラバラなので、結局ウェブページを見に行く羽目になるのが不便である。ウェブ公開してあるのはありがたいことなのだが。

　質を信用しているスーパーが、今日は鮮魚が安いらしい。刺し身も含めて。それなら今日は海鮮丼にしてしまおう。

　島根半島沖で取れたアジ、イサキ、ハマチ、カナ、そして境港の本マグロ。全て山陰産である。これをご飯に乗っけてしまう。パックについている甘く濃厚な木桶醤油とワサビ、生姜でいただく。

　やはり、山陰の海産物は美味しい。それはつくづく思う。特に刺し身は、鮮度抜群をそのまま、といった感じで、どれもぷりぷりとしている。山陰は加工や調理がいまいち得意ではないので余計にそう思うところはある。境港産のマグロは夏のものなので比較的あっさりとなめらか。朝取のアジが今回は特に美味しかった。脂が乗って味が濃く、生姜醤油がとてもよく合う。締めには、出汁パックでとっておいた出汁で茶漬け風に。最後までしっかりと堪能した。

　主に雨のせいで、今日もなかなか疲れてしまった。梅雨明けはまだか。