6月29日 タコライス

 一日中、身体を丸めて、ダンゴムシになっていた。

 頭痛薬を飲んだり、漢方を飲んだりしてみたが、一時しのぎである。どんよりとした空気に圧しつぶされる。

 一時しのぎ策は一応、薬の他にもいくつかある。

 ひとつは、両耳を引っ張ったりぐるぐる回したりするもの。これが効くということはやはり、内耳が虚弱なのだと思う。

 もうひとつは、平沢進『賢者のプロペラ』を聴くこと。これが「頭痛が消える」とまことしやかに語られるようになったのはいつからだったか。初めは私も全く信じてはいなかった。いや、今も半信半疑である。だが試しに縋ってみたところ、本当に痛みが消えてしまったのだから仕方ない。まぁ私は音楽の力を信じている方だし、酒やパンを美味しくするためにクラシックを聴かせる人々もいるのだから、頭痛に効くこともあろう。きっと。


 こりゃあ無理だ、となったので、夕飯は夫に頼んだ。『すき家』が夏季限定でタコライスを売っていると聞いたので。

 牛丼チェーンで私が一番好きなのは『松屋』なのだが、なんと山陰には存在感しないのである。カレーも美味しい松屋。ゴロゴロチキンカレーを泣く泣く我慢した昨年を思い出す。どうしてここには松屋が無いのだ。スタバすらあるのに、何故。

 すき家はネギ抜きをしてくれる牛丼チェーンなので吉野家よりは親しみがあるが、肉や味のバランスは松屋の方が好みである。その為、山陰に来てから数えるほどしか利用していないのだが、タコライスのお味や如何に。

 平たく盛られたご飯の上にレタスとタコミート、そこにいつもは牛丼にかけられているミックスチーズがとろりと溶けている。見た目はちゃんとタコライスである。

 正直言って、全く期待していなかった。きっと多少違和感があって、「でもまぁ、すき家だしな」で終わるだろうと。しかしその予想は良い方に裏切られた。

 思っていたよりもずっと、ちゃんとタコライスの味なのだ。トマトベースのタコミートはしっかりとチリスパイスの香りがあり、レタスやご飯と合わせてちょうど良い塩梅。辛さはさほど強くないのもありがたい。私は使わなかったが、物足りない人向けにはタバスコが付いている。そして牛丼との相性はさして良くない濃厚なミックスチーズが、本領を発揮してコクとまろやかさを加える。

 ミックスビーンズが入っているのは邪魔に感じたが、ちゃんと美味しいタコライスだった。


 明日以降、また天気は荒れるらしい。今週はもう何にもできないかもしれない。

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