6月10日 『ル・パンデモニウム』のパン

 遅く起きた朝、というか昼。

 昨日、米子で買ったパンをテーブルに並べる。うむ、美味しそう。


 そのパン屋の名は『ル・パンデモニウム』という。

 米子市内の住宅街にひっそりと開かれたその店は、深い緑のひさしにゴブリンのマークが印象的な店構えである。間口は小さく、ガラス戸の奥には金のドアノブのついた木製の扉がもう一枚、秘密を護るように設えてある。それをそっと開いてみると、そこは隠された万魔殿パンデモニウム。目に飛び込んでくるのは鮮やかなピンクの天井、それからピーコックグリーンにアールデコ調の花柄の入った壁紙と、その前に並ぶたくさんのパンたちである。フロアは奥に長く、意外に広い。これはなかなかの異空間。

 美味しそうなパンを前に目移りしつつ、いくつかを選び会計をした。我々は利用しなかったが、どうやら2階ではイートインもできるらしい。


 まずは食パンの「プルマン」をトーストしてみた。思いの外みっしりとしている。特徴的なのは、ほんのりとフルーティーな、独特の風味。残念ながら店の説明書きを覚えていないのだが、パン種が違うのかもしれない。バタートーストにすると塩気も程よく引き立ち、なかなかに美味しい。

 他に買ったのは、シナモンロール。もっちりとした生地にシナモンフィリングがしっかりと入っているだけでなく、アーモンドスライスやヘーゼルナッツ、ピスタチオなどのナッツもたっぷりと練りこまれている。ナッツ好きである私としてはたまらない一品。

 それからゴーダチーズのフーガス。フーガスとは南フランスで親しまれている平たいハード系のパンである。これはその生地にしっかりとチーズを敷き、トップにはさらにゴーダチーズを乗せて。しっかりと温めなおすとこれが実に美味しい。今回買った中では一番良かった。少し酸味のある本格的なフランスパン生地はしっかりと噛みごたえがあり、噛むほどに味わい深い。そこに数種類のチーズがとろりと混じり合い、旨味とコクが攻めてくる。素晴らしい。

 もう一つは、あんバター。ころりとゲンコツ大の全粒粉生地に、ちょうど良い甘さの粒餡とたっぷりの大山バター。惜しみなく入った大山バターのミルク感と塩気が、全粒粉と粒餡の風味を絶妙にまとめあげる。これもまた美味しかった。

 最後に、ヘーゼルナッツとチョコレートチップのマフィン。これもまたみっしりとした生地に、満遍なくたっぷりのチョコレートチップが練りこまれている。正直ヘーゼルナッツの風味はそこまで感じなかったが、小さいわりに食べ応えはしっかりとあるマフィンだった。


 全体に生地がみちっと詰まっており、よく噛んで食べるタイプのパンばかりだった。そのせいか、かなり腹持ちがよく、現在まで全くお腹が空かない。脅威の食べ応えである。食感的にやや飽きが来るところはあるが、味わいに個性のあるパンだったと思う。値段がかなり強気なところがネックだが、実に面白いパン屋だった。


 そんなブランチを終えてあまりにも満腹になり、しばらくごろごろと夫がゲームするのを見ていた。夕方近くにやむを得ず買い物に出かけたが、ひどく蒸し暑く、不快指数の高さに辟易とした。

 できることなら昨日のうちに買い物を済ませたかったものの、今日安いものが多かったので仕方ない。


 今夜はこのあと、オンラインで映画『犬王』を観ることになっている。古川日出男については超初心者なので不安もあるが、楽しみである。

 折角なので、昨日買った七冠馬の梅酒も開けようと思う。感想はまた、明日の日記で。

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