5月11日 豚肉ソテー、ポルトガル風ズッキーニ、椎茸チーズ焼き

 ようやく体が復調してきた。

 昨日は体調も精神も底の底といった感じで、周りの方々に介護されてしまった。大変申し訳無い。ありがたい限りである。

 これではいけないと、とりあえず外に出ることにした。まぁスーパーくらいしか行くところは無いのだが。ミールキットも使い切ったことだし、数日分の買い物をしなくては。


 出かけた先のスーパーで、手押し車を押しながらゆっくりと歩いてくる老婦人に行き合った。老婦人は自動ドアから出てくるところだったので、私が道を避けて待っていると、その目がまあるく見開いて私を見る。


「まぁ背が高いっひっひっひっひっ」


 私の胸の辺りに頭が来るくらいの小柄な老婦人は、大変楽しそうに笑いながら、そのまま通り過ぎていった。私はそれに愛想笑いを返しつつ、軽く会釈をするしかできなかった。

 実際、私は女性の平均よりは背の高い方である。とはいえもっと高身長の女性の友人もいたし、コンプレックスに思ったことはない。幼い頃から老けて見られていたのが軽くショックだった程度である。だから別に、老婦人を不躾に思っただとか、怒りや悲しみが湧いたわけではない。

 ただ、あのとき私はどうすれば良かったのかがわからなかった。私の反応は正解だったのだろうか。もっと他に、できることがあっただろうか。そもそも私は老婦人の言葉をどう受け止めれば良いのだろうか。

 何も、何もわからない。

 私はしばし呆然としながら、スーパーをうろうろと歩き回ることになったのだった。


 今日のメインは、豚肉のソテーである。再び三國シェフのレシピ。豚肩ロースが少し安くなっていたので。

 オリーブオイルで表面を焼き付けて、アロゼ(フライパンの熱い油を上からかける調理法)しながら肉に火を通していく。粗方焼けてきたら刻んだニンニク、白ワインビネガー、はちみつを加えてとろりと熱を加え、最後に粒マスタードと醤油を入れてひと煮立ちさせれば、豚肉ソテーのハニーマスタードソースが出来上がる。

 昨夜、Twitterで粒マスタードの使いみちの話をしていて、無性にこれが食べたくなってしまったのだった。

 肩ロース肉はしっかりと噛みごたえがありつつも、アロゼすることによりしっとり柔らかく仕上がった。粒マスタードと白ワインビネガーの酸味をハチミツが適度に和らげ、コクを出す。醤油が入ることで味が決まり、白米にもよく合うソテーになった。


 これに合わせたのは、ズッキーニのポルトガル風和え物。

 本来は別の呼び名だった気がするが、残念ながら調理工程しかメモが残っていないのである。

 縦に薄切りしたズッキーニを、塩と白ワインを加えたたっぷりの湯でさっと茹でてからザルで冷まし、刻んだ大葉とゴマ・すりおろしのニンニク・粉チーズ・オリーブオイルを混ぜ合わせたものと和えるだけ。

 爽やかな大葉に香ばしいゴマ、ほんのりと白ワインが香るズッキーニは、むにっと程よい食感。ゴマの香ばしさに粉チーズの塩気とニンニクの風味が食欲をそそる。サラダ代わりにさっぱりと食べられる、お気に入りのレシピである。夏の盛りにもまた作るだろうと思う。


 もう一つの付け合せが、椎茸。

 島根の椎茸は、やたらデカくて安い。都内でよく見かけるサイズの1.5倍ほどあると思う。キノコ類は好物なので、私にとってはありがたい話である。

 軸をとり、味噌・酒・砂糖を混ぜたタレを傘の内側に塗り、その上からたっぷりとチーズを乗せてからトースターで焼く。

 焼くと少し萎んでしまったが、肉厚の椎茸を噛めばその旨味が口いっぱいに広がり、そのジューシーさに驚く。味噌とチーズの相性も良く、もっとたくさん作ってもぺろりと平らげたことだろう。手軽な割にかなり美味しい。これは酒の肴にも良いやつである。


 もうすぐ週末。

 最近、酒と煙草が恋しくなっていけない。特に煙草は、また吸い始めてしまったらもうやめられない気がする。

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