3月26日 ミルクソフトクリーム
どんよりと薄墨色の雲が立ち込める中、夫と
桜の花はほぼ満開。アスファルトに落ちた花びらはまだ無い。曇り空を背景にした桜の色は淡くぼやけて、うっすら笑いかけるように咲く。道の両脇から伸びる枝がつくるアーチの下にはまばらに屋台が並び、人々はほどほどに賑やかだった。おもいおもいの歩幅と速さで、皆が歩けるくらい。
それは穏やかで美しい光景だった。けれど私は、それ以上の感慨を抱かなかった。何故だろうと考えてみると、私はたぶん、散りゆく桜が好きなのだ。五枚の花びらがほどけてひらひらと舞い、それがいくつもの足に踏まれていく頃。今よりもずっと香りの濃くなるあの時期。花吹雪と一緒に私も風に攫われたくなる。
それはまだ、もう少し先。
島根の牛乳はうまい。特に木次乳業の牛乳は、私が今まで飲んだ中で一番好みの味がする。しっかりとコクはあるのだが飲み口はさらりとして、臭みもなく素直な味わい。それでいて、そのまま飲むのはもちろん、飲み物や料理に合わせると味をランクアップさせる力がある。温泉に浸かった後のコーヒー牛乳などは格別である。
そんな木次乳業のミルクソフトクリームが食べられるというので、「道の駅 さくらの里・きすき」に立ち寄った。
ホームページ上では午後六時まではレストランが開いているはずなのに、午後五時時点で「本日は終了しました」の札が下がっているのには辟易としたが、ソフトクリームはそちらではなく併設のデイリーヤマザキで販売されているのだった。危ない危ない。
なかなかにカオスなデイリーヤマザキだった。3月31日に期限の切れるペットボトル飲料が半額になっているなど、あちこちに見切り品の棚があり、地元の特産品コーナーがちょろっとあり。フランチャイズ店の自由さなのだろうか。
レジには、もしかすると店主かもしれない、眼鏡にグレイヘアの女性がいた。ソフトクリームを注文すると、チャチャっと手際よく盛ってくれる。すぐそばの休憩エリアで食べることにした。
くるんと巻いたてっぺんから一口。瞬間、口の中にたっぷりとミルク感が広がる。ひんやりとなめらかな舌触り。とろりとした口溶け。生クリーム系のソフトクリームが増えている中、しっかりと牛乳の美味しさを全面に出してくる、この味が良い。濃厚なのにクドくはなく、自然な甘さがふわりと残る。木次乳業の良さがとても良く出ているソフトクリームだった。
正直なところ、食べ終わる頃にはすっかり体が冷えてしまって、ソフトクリームを食べるには時期が早かった気もするが、食べて良かった一品だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます