3月25日 フィナンシェ

 目覚めた時から結構な頭痛。ロキソニンプラスを飲むことから始まる一日。今日の空はぼんやりと晴れているのに。

 昨夜、少しはしゃぎ過ぎたのかもしれない。同時視聴で『ゴーン・ガール』を観た感想を、ツイッターのスペースでひと通り喋った後、そのままとりとめのない話を午前四時近くまでしていた。それぞれの地元のスーパーの話だとか。正気じゃない。しかし楽しかった。金曜の夜とはそういうものだろう。


 頭痛や生理痛の救世主、ロキソニン。あんまり常用するとかえって痛みの原因になるというので、ひどい時にしか使わないようにはしている。飲んだことのある人はなんとなくわかってくれると思うのだが、ロキソニンの効き方は少し独特だと思う。体を丸めてウンウン唸っているところに薬が効いてくると、原因が何であれ、すぅっと痛みだけが消えていく。その瞬間がなかなか唐突にやってくる。もわりと、痛みが形を無くす。おや?あれ?と、戸惑うほどに。痛みというのは体からの警告だというから、こういう対症療法はほどほどにしないとなぁ、と思わず考えてしまったりもする。

 ともあれ、その痛みがないだけで体はだいぶ動くようになるので、やはりときどきは頼らせてもらいたい。


 突然だが、私はフィナンシェが好きだ。

 甘いものはだいたい好きなのだけれど、その中でもフィナンシェは圧倒的上位に入る。今後一種類しかお菓子を食べられないとしたらフィナンシェを選ぶ、というくらいには。ときどき自分で焼くこともある。

 金の延べ棒を模した形。その美しい直線はカリッと香ばしく、中央の控えめな膨らみはふんわり柔らかい。一口噛めば、アーモンドプードルとバターの風味が絶妙に混じり合い、舌先から鼻腔へと広がっていく。おお、麗しき黄金色の焼き菓子!

 一週間前に大阪へ旅行したとき、自宅用に何を買って帰るか色々調べたところ、「ちひろ菓子店」という洋菓子屋を見つけた。どうもフィナンシェがメインの店らしく、しかもこの店名である。私のペンネームとリンクしているのだ。これは行かねばなるまい。


 というわけで、本日のティータイムはその「ちひろ菓子店」のフィナンシェを3種、夫と分け合った。

 まずは最もスタンダードな「極上プレーン」。半分に割ってみると、その断面は白い。口に含めばじゅわりと油脂の滲む食感に、芳醇な発酵バターの薫り。実に美味である。個人的な好みは、もっとしっかりバターを焦がしナッツ感も強めのタイプなのだが、ここまで良質なバターが立ってくるフィナンシェはそう無い。これはこれで、一つの完成形だと思う。

 春季限定の「さくら」は、見た目も可愛らしい桜色。ほわっとした食感とほんのり感じる塩気も相まって、桜餅のよう。桜の花を見る前に、桜の香りを楽しんでしまった。そんな春も良い。

 三種目は「ピスタチオ」。何せ私はピスタチオにも目がない。最近はやたらピスタチオフレーバーが世に出回るようになって嬉しく思うものの、その多くは微妙にコレジャナイ感がある。その点、こちらのピスタチオフィナンシェは完璧だった。噛むほどに感じる、混じり気の無いピスタチオの味わい。上に散らされたローストピスタチオの香ばしさ。素晴らしい。拍手を送りたい。ありがとう「ちひろ菓子店」。


 そんな美味しいフィナンシェに合わせたのは、マリアージュフレールの紅茶。フレーバーは、マリアージュフレールを代表するマルコポーロ。鼻を抜けていく果実や花の甘い香りは、酔ってしまいそうなほど芳しい。シンプルな焼き菓子にもよく合う。

 この茶葉は先月の誕生日付近に、Amazonの欲しいものリストをダメ元でツイッターに公開していたところ、優しいフォロワーが送ってくれたのだった。マリアージュフレール、今のところ島根で買えるところが見つかっていないので本当にありがたい。改めて感謝を。


 マドレーヌではないので、フィナンシェを紅茶には浸さないように。

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