3月22日 珈琲とチーズケーキ
気がつくと、侍ジャパンが優勝していた。
ネット上はそりゃあもう結構な騒ぎで、動画やら裏話やらハイライトやらがワッと溢れかえっている。素直にめでたいなぁと思うものの、私は一試合も見ていない。島根の地上波では映らないからである。地方あるあるというやつ。
とはいえ、映ったところで見ていないだろうとも思う。私にはスポーツ観戦という趣味が無い。自分が体を動かすことが極端に嫌い、というのもあって、スポーツ全体に興味が無いのである。その上、自分が見たら贔屓している方が負けそうな気までする。実際、気まぐれに見ていたら何度か負けた。私と彼らの道は交わってはいけないのだ。そういうことにしよう。
ここまでは昼間に書いて、ここから先は川沿いのカフェバーで書いている。カウンターの奥の棚にはレコードがぎっしりと詰まっていて、マスターがいま宇多田ヒカルをかけてくれたところ。
島根に新作をかける映画館は二館しかない。そしてどちらも、ある程度の人入りが見込めるものしか上映しない。ミニシアター系はほぼ全滅と言っていい。気になる映画の上映劇場一覧を見て、山陰がスルーされているのを確認して落胆するのに、私は未だ慣れない。ひどいときは中国地方ごと飛ばされるのだが、いっそその方が諦めが───つきはしないが心情的にいくらかマシである。
そんな文化格差バリバリの映画館でも、公開前からの話題作ならば観ることができる。『シン・仮面ライダー』である。
観た。観てしまった。好きなシーンもキャラクターもたくさんあるのだけれど、めちゃくちゃ変な映画だった。何を言ってもネタバレになりそうなのだが、最高の森山未來を観ることができたのでとても満足である。あの人の身体はどこまでいってしまうのだろう。蝶のように美しく、夢のように儚く、しかし人間のしなやかさがある。素晴らしかった。
ウルトラマンやゴジラは少し通っていたけれど、ちゃんとシリーズ通して見たライダーは電王くらいの私でも充分に楽しめた映画ではあった。だが、『シン・ゴジラ』よりも『シン・ウルトラマン』よりも、人を選ぶ作品になっているというのは、世間の評判の通りだと思う。
庵野秀明、恐ろしい男。
枡酒のようにカップの縁までなみなみと注がれた珈琲は、夜遅くに飲むのにもちょうど良い深煎り。併せてチーズケーキをいただく。底のクッキー生地も香ばしい、みっしりとしたベイクドタイプである。好み。
レコードはちょうど細野晴臣の『あめりか』が流れているところ。
すっきりとした、良い気分だ。
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