第11話 白の一族①

 燭台の蝋燭がずいぶん小さくなっていた。

 寝台縁に不自然な間を空けて腰を下ろす大柄の青年と、隣に座る青年のせいでずいぶんと小柄に見える少女。二人の巨人のような影が、寝台脇の壁に映し出される。

 ゆらゆらと揺らめく炎に合わせて、壁の影もゆらりと歪む。


「私はね。〈白の一族〉の住む隠れ里に住んでいるの。エンガリアの人は、白の一族って知ってる?」

 

 ユリアは横目でちらっとライナルトを見てから、膝の上で重ねた手に目を落とす。

 ライナルトは中央大陸エンガリアの住人だ。西の大陸イーリアの事情は知らないかもしれない。その配慮から、ユリアは極力丁寧に説明するつもりだった。


「エンガリア人にとって周知の事実かと問われれば、答えは否、なんだけど。俺は知ってるよ。知識としてって意味だけど。四大魔法を自在に操り、銀色の髪と、青い瞳を持つ……そうか。ユリアちゃん、〈白の一族〉の特徴を兼ね備えていたわけだ……今の今まで結びつかなかったよ。だから、頑なにフードを取らなかったわけだね」


 呑み込みが早くて助かると思いつつ、ユリアは言葉を続ける。


「じゃあ、白の一族が迫害の対象だったってことも知ってるのね?」

 

 ライナルトは一瞬押し黙り、おもむろに片手を首の後ろに当てると、やや俯いてから頷いた。


「これから話すことは里の機密に関わることだし、口外しないでもらいたいのだけど」

 

 ユリアがライナルトに向き直り、顔色を窺うように見つめると、ライナルトは首に当てた手を膝に戻し、改まったようにユリアの方に体を向け、居住まいを正した。灰緑色の瞳をまっすぐユリアに向け、真剣な表情でこくりと頷く。


「もちろん、約束する」

 

 真摯すぎる態度に、ユリアの方がたじろぎそうになりながらも、ライナルトの言葉に頷き返し、話を続けた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る