第8話 友情っていいね!
「他のやつに迷惑かけてんな!さっきも言っただろう!その
さすが従姉妹相手だと容赦ないわ。
てかもしかして私が受付行ってる間になんかあった?拗れた思考回路ってなんだろ?
「おおーい。大丈夫ですか?」
魅琴を助ける際に脱臼させて今は戻して鎮痛剤飲ませてあること、箒がどっかいっちゃったままだということを運営の人に伝えて、まだ怒鳴り足りないって表情の亜留斗の肩を叩いた。
「亜留斗ごめんね。行こ、時間ヤバイ」
「……あぁ、そうだな」
まだ怒りは収まってないって感じに眉間に皺を刻んだまま、亜留斗は箒に股がった。
「こいつが迷惑かけた詫びにガードになるから後ろ着いて来てくれ」
「え、いやいや。まだ間に合うし」
「いいから」
はい、出ましたー!亜留斗の『いいから』
これが出ると頑固にこっちの主張は聞いてくれなくなるのは10数年来のつきあいで知ってるのでありがたく尻馬に乗せていただきますよ。
ほんと昔から食べたいアイスが被って最後の一個だからジャンケンしよって言ってるのに「いいから」で私に譲るし、キャッチボールで私が暴投しちゃって沼ん中入れちゃったときも取りに行こうとした私を制止して低空飛行苦手だったくせに必死でボール取ってくれたり……思い出してくとキリがない。
昔から年齢が一個上ってのも本人的に意識してるのか兄貴ぶるとこあるんだよねぇ。
今だってフリフリ魔法少女衣装なのにキリッとした表情で「着いて来てくれ」っていつもの頼もしい表情だっただけに笑いそうになったわ。
笑ったら拗ねそうだったから必死で堪えたけど。
「わかった。頼むね」
ぺこり、と小さく頭を下げて答えるとようやくいつもの亜留斗らしい余裕ある顔になって「おう」と頷いた。
「じゃあ行くぞ」
その声に合わせて飛び上がったんだけど……亜瑠斗前よりスピード上がってない?!
着いて来いって言っといて!いや確かに足切りギリでケツカッチンだから急がなきゃだけど!
ギュンッとスピードをあげて亜留斗の真後ろにつく。そうすると風の抵抗がなくなるから同じスピードを出してても使う魔力が少なくて済む。
ちっちゃい頃も遊び疲れてへろへろになってたら帰りにこうやって翔と交代しながら引っ張ってってくれたっけなぁ。
てか、さっきも私魅琴を後ろから見守るんじゃなくて上手いこと誘導して後ろに入れてあげれば良かったのか!
そしたら魅琴は怪我しなかったし、亜留斗を引き帰らせることもなかったのに……私のバカバカ!
ごめんね、亜留斗。あとで焼き肉おごるから。一番安いコースだけど。
そんなことを考えてる間に光岳に到着!もちろん足切りにはあわなかったよ!
「亜留斗ありがと〜!マジ助かった。明日は焼き肉おごるわ」
「いや、うちのバカ従姉妹のせいだからな。むしろこっちがおごんねぇと親父に怒られるわ」
あー亜留斗んとこのおっちゃんな。
おっちゃんや親父という言い方がこれほど不適切な美中年はいないだろうって人だ。日本魔女屈指のイケメンって言ってもたぶん過言じゃない。
母も亜留斗の農園行く度に、
「あ〜目の保養できたわ〜」
って言ってる。魔女は基本綺麗なもの好きだよね。
流石同じく魔女界きっての美魔女と呼ばれる魅琴の母親の弟だ。
昔のサバトではふたり揃ってサバトの華って呼ばれてたとか。
魅了系って一族的に美を極めてるとこあるからね。
だからこそ
うん……確かに亜瑠斗のおばちゃん個性的で面白いけどね。
最初に会ったときも泣いてる私見て「マンドラゴラみたいにしおしおした顔してて可愛い」って慰めるでなく言われたからなぁ。
あんな美形を夫にしといてマンドラゴラの方が可愛い!大切!って公言しまくってる人だしな。おっちゃんもそんなおばちゃん見て怒るでもなく「キラキラしてて素敵だなぁ」なんて見守ってんだからガチでおばちゃんのこと好きなんだなって子供心に思ったもんだわ。
そんな仲良し(?)夫婦なとこしか見てないからおっちゃんが怒るとこなんて想像つかないんだが、亜留斗曰く美形の無表情は怖い、だそうだ。
「そんじゃもし余ってたら亜留斗んとこのジュース分けてよ。持って来てるんでしょ?」
「MANGOジュースか?」
マンゴージュースと同じ発音だが。材料はマンゴーじゃない。そう!
マンドラゴラを短くしてMANGOジュースらしい。
駄洒落だろ。
商品名というのは得てしてそんなものかもしんないけど。
でもこいつが魔力使った体には効くんだわ!
ぎゅんぎゅん魔力回復するのがわかるのよ。
子供の頃に興味引かれて一口飲んでぶっ倒れたのは懐かしき思い出。
今はもう普通に一本分飲めるまでに成長しましたからね。
「まあいいけど」
そう言って亜留斗は箒につけたホルダーから5秒チャージのゼリータイプMANGOジュースを外して渡してくれた。
ジュッと絞るようにしてゴッゴッゴッと一気飲み。
キタキタキターーーー!!
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