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 アオバのポケットに入っていたしおりを、全員が見て触って確かめる。

 赤茶色の薄い紙でできたしおりの真ん中の部分には達筆な筆文字がとても大きく書かれていたが、それ以外は特段代わり映えのない、普通のしおりに見えた。

 だが、そのしおりに書かれた文字を見て、りょうたがあっと小さく声を上げる。


「………あ、こ、これ、あの字に、似てる」

「ん? どうした、りょうた?」

「こ、これ、あの、ノートの字に似てるよっ!」

 今度は、大きく驚きの声を上げ、前方を指差すりょうた。

 その声に、りょうたの目線で話せるよう腰を屈めていたユタカだけではなく、他の五人も反応し、その指差す方向へと視線を向ける。


「えっ? えっ? りょうたくん、どうしたの?」

「びっくりしたわ。柿くんが、そんな大きな声を出すのは初めてじゃない?」

「いったい、どうしたんですか? 何か見つけたとか……」

「ちょっと待って。字が似てるって、もしかして……貸して! アオバちゃん!」

 そう言うと、あさひはアオバの手元にあったしおりをパッと取り、元のA4サイズに戻っている『希求筆記帳』の表紙の側に並べてみた。

 すると――――


「み、みんな見てっ! この字、やっぱりそっくりよ!」


 今度は、あさひまでもが今までに出したことのないような声で他の五人に呼びかける。

「あさひさんまで、どうしたんだよ……って!? うぇ!? ま、マジか……」

「こ、これは……」

「そっくりな筆跡……」

 並べられた二つの文字を見て、あまりの衝撃に体を動かせなくなるユタカとタカラ。

 確かに、あの『希求筆記帳』の表紙に書かれていた『希求 学校に関すること』の文字と、このしおりに書かれている『陸奥木戸』の文字はそっくりだ。

 さくらに至っては、しおりを『希求筆記帳』の表紙に重ねて確認するといった行為を何度も繰り返していた。


 そんな様子を見て、一人首をかしげるアオバ。

「ホントだぁ〜。この二つ、そっくりだね! ん?でも、何でみんなそんなにびっくりしているの?」

「お前なーー! 何で、これ見て気づかねーんだよっ!」

「え〜? 確かにどっちもすごーく大きな字で書いてあるよねー。でも、それがどうしたの?」

「アオバさん。これがもし本当に同じ字だとすると、どういうことになるかわかりますか?」

「えっ? わ、わかんない。別に、字が似てるってことだってあるんじゃない? そんなに凄いこと、なの?」

「片岡さんの話では、ここのお屋敷の主さんはこのノートを使って“消えてしまった学校”の再建を望んでいたとのことでした。なので、表紙の文字を書いたのはここのお屋敷の主さんだと思われます。つまり、表紙の文字としおりの文字を書いたのは同一人物。そして、そのしおりがノートの中で発見されたということは…………」




「今、行方不明になっているここのお屋敷のご主人は、『希求筆記帳の中にいた、もしくは、まだいる可能性がある』ということです」




「え、ええ? えええええーーーー!?」







 考えられる可能性を前に、『希求筆記帳』の前に立ち尽くす六人。


 自分たち以外に、あのノートの中に誰かがいるなんて考えてもみなかった。


 しかも、それがこのお屋敷の、現在行方がわからなくなっている『麻生田家当主』かもしれない。


 でも、あの学校は最初から描かれていたわけではなく、元は白紙のページだったはず。そんな状態で、あのノートの中に入ることができるのだろうか。


 それに、このお屋敷の当主は『麻生田』と片岡さんが言っていたから、『陸奥木戸』という名前とは合致しない。


 もしや、『麻生田』が名字で、『陸奥木戸』が名前なのだろうか。


 それとも、『陸奥木戸』は名前ではなく、どこかの地名なのだろうか――――――







「あ〜〜〜〜、もうっ! わけがわかんねー! 頭ん中がごちゃごちゃしてきた!」

「う、うん……」

「情報過多で、湯気が出そうですよ……」

「じょう……かた?」

「内容があり過ぎて、わけがわからなくなってしまうってこと。いっぱいだと、頭が疲れちゃうわよね」

「ふぅ……。とりあえず、私たちだけでは判断できないし、ここを片付けてから片岡さんに見てもらいましょうか」



 さくらの言葉に皆同時にうなづき、疲れた頭を何とか支えながら、残りの本を急いで棚へ片付けて書斎を後にするのだった。

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