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 一言目はためらいながらも、しかし、決意を込めてはっきりと、よどみなく響き渡る声。

 他の小中学生メンバーと比べて大人びた印象を持ち、一歩引いているようにさえ見えていた様子とは違い、今、皆に向けるそのまなざしは熱を帯びている。

 その様子は、これまでのタカラの印象とは打って変わったように感じられた。


「おっ! 何かやる気になってんじゃん。また学校全体を理科の実験室にするやつの別バージョンでも作るのか? あの道具をいろいろ使って改造するのとか、結構面白かったぜ」

 ユタカがそう声をかけると、タカラは軽く首を振り、一呼吸置いてからゆっくりと想いを表現していく。


「……実は以前から、それこそ、現実の世界にいた時から“こうなればいいな”ってイメージしていたものがあるんです。でも、それは実現するのは難しいことで、まあ、もしかしたら何十年後には可能なのかもしれませんが、きっとすぐには、僕が中学校にいる時は無理だと思っていたんです。だから、自分で心の中でブレーキをかけていたというか……。それこそ、『パッと使える魔法でもなきゃ無理』だって思って。……なので、固くフタを閉じていたんですよね。実現不可能なことを空想するだけなんて、虚しくなるだけじゃないですか。でも、アオバさんやりょうたくんが“魔法の学校”を作ることを何度も挑戦しているのを見て、僕もやっぱりやってみたくなったというか……。やらないで諦めるより、やってみてからでもいいかなって。そう、そう思ったんです!」


 せっかくの“魔法のような道具”があるのに、使わずに最初から『どうせできない』なんて諦めてしまうのはもったいない。

 魔法は再現できなくても、この『希求筆記帳』を使えば、自分の心の中にある思いは再現できるはずなんだ。


 タカラの熱意のこもった言葉を聞き、他の五人も大きくうなづいて賛同する。

「だっよなー! お前の本気の思い、ワクワクするぜ」

「……ぼ、ぼくもっ!」

「ふふっ。タカラくんが、こんなに熱く語ってくれるなんて何か、いいですね」

「……そうね。子どもって、こんなにキラキラ輝きを持っていたのよね」

「はいはーいっ! じゃあ、タカラくんがあのノートにうまく思い描けるように、“先輩”のアタシが教えてあげるね! あのホワイトボードの四番目の『やりたいことを、あたまの中でつよくおもう』ってのがコツなんだよー!」

 えっへん、とした表情で説明書きがされているホワイトボードを指さすアオバ。

 それに対して、やれやれと呆れた顔を浮かべるユタカ。

 毎回、この二人は五歳差とは思えないほど対等な関係でバトルを繰り広げている。


「アオバ、お前、何急に先輩づらしてんだよっ! タカラだって別に初めてやるわけじゃねーんだから、わかってるって! なあ?」

「え〜? だって、せっかくタカラくんがものすごーくやってみたいことを描きたいって言ったから、絶対にうまくできるように教えてあげた方がいいかなーって。あのね、ふわふわした感じじゃダメなんだよ。つ・よ・く! 思うことが大事なんだよ〜」

「だーかーらっ! 後輩が偉そうに言うなって!」

「ぶぅーー! 今はアタシが先輩だもん!」

「……くっ、くくっ! アハハッ! 本当にあなた達のコンビは見ていて飽きないですね。もう、ウジウジ悩んでいたのが馬鹿らしくなりましたよ。アオバさん、ありがとうございます。大丈夫です。強く願ってみますね」

 タカラはそう言うと、窓際の机の上に置いてある大きなブックスタンドの側へ行き、ゆっくりと深呼吸してから『希求筆記帳』の白紙のページに右手をかざした。


 何となくじゃ、ダメだから。

 強く、深く、頭の中で思い描く。


 僕が、いいなと思う学校。

 もっと、もっと、ハッキリと。



 目をつぶり、頭の中で願う気持ちを色濃くしてみる。

 すると、『希求筆記帳』からあの強い光が放たれ、六人の体は再びページの中へ飲み込まれていったのだった。


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