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「うんめー! 何だこのサンドイッチ!? 今まで食べたことねーくらい旨いんだけど!?」
「ただのキュウリのサンドイッチかと思いましたが、水っぽさもなく凄く上品な味がしますね」
「ホントっ! どれも美味しいねっ! このちっちゃいケーキが乗っているのも、すっごく可愛い!」
ユタカとタカラの中学生コンビと、活発な小学生のアオバは、執事片岡が運んできた軽食を口に入れると、その美味しさに自然と声が溢れ出ていた。
「ふふっ。見ているだけで美味しさが伝わってくるわね。わたしは、このスコーンをいただこうかな」
高校生のあさひがクスクス笑いながら手に取ったスコーンを二つに割り、その中にたっぷりのジャムとクロテッドクリームを塗っていく。
目にも鮮やかな赤と白のコントラストは、食欲をさらに引き立て、それを見ていたりょうたも自分の食べたいものをケーキスタンドから探し始めた。
「ぼ、ぼっ、ぼくは、これを……」
しかし、小学校に入りたてのりょうたの体はまだ小さく、ヴィンテージ調の長テーブルにうまく身を出すことが難しい。
自分の位置からはお目当てのものを取ることにもたついていると、先程まで紅茶の爽やかな香りを楽しんでいたさくらがその様子に気づき、慣れた手付きでテキパキとりょうたの皿へ盛っていった。
「このイチゴのプチフールとオレンジのカップゼリーね。あとは……あっ、片岡さんこれも手で取って大丈夫かしら?」
「構いません。アフタヌーンティーは下から順番に取っていくのがマナーですが、今は皆様にお食事を楽しんでいただきたいので、お好みのものから召し上がってください」
そう言うと片岡は、軽い食事を楽しんでいる六人に対し、この屋敷の見取り図を見せながら各部屋の場所や、あの不思議な道具の使い方などについて説明を始めた。
屋敷が建てられている場所は六人ともに聞いたこともない地名であり、そもそも国の名前からして自分たちが住んでいるところと違っていた。
周囲には、家も店も何もなく、窓の外から見える景色は、ただの広々とした草原が地平線の遥か彼方まで見えるだけ。
食料や生活必需品などはどうやって手に入れているのか聞いてみると、月に数回遠くの街へ出向き、大量に購入して巨大な保冷庫に備蓄しているとのことだった。
なお、食料に関しではつい最近購入したばかりらしく、ここにいる全員分の食事は当面まかなえるとも付け加えていた。
使う言葉や文字はまったく同じ。家具や道具も、豪華な装飾が施されているもの以外は、普段見慣れたものばかり。
でも、自分たちがいた世界とは全く違う、不思議な場所。
説明を聞きながらいろいろな思いを巡らせていた六人だったが、片岡の話がようやく本題に入ったので、一度思考を切り替えて耳を傾けた。
片岡の説明を要約すると、このような内容だった。
『希求筆記帳』は、頭の中で思い描いた内容を投影、浮かび上がらせることができ、それを現実の場面で体験することができるものであること。
ただし、あまりに漠然とし過ぎた内容は正確な場面として浮かび上がらせることはできないため、今までまったく見たことのないものや知識として知らないもの、例えば、“すごい魔法を使って魔王を倒す”と願いは、魔法とは何か、魔王とは何かといったことを学ばない限りは具現化することはできないとのこと。
『希求筆記帳』は、屋敷の二階にある書斎エリアでのみ使用可能であり、さらに屋敷外へ持ち出してしまうと完全に効力を失ってしまうこと。
使用する時は、書斎にある大きなブックスタンドに『希求筆記帳』を置き、空白ページを見開きの状態にして右手をかざすこと。
『希求筆記帳』は、表紙に書かれたテーマに関することのみ思い描いた願いを叶える仕組みとなっているため、それ以外の願いを叶えることはできないこと。
すでに、表紙には達筆な筆文字で『希求 学校に関すること』とデカデカと書かれているため、例えば、『お金持ちになりたい』だの、『世界征服』だの、ましてや『家に帰りたい』といった願いは叶えることができない。
――とのことだった。
そして、最後に片岡はこう強く言葉を紡ぐ。
「皆様には、“学校“というものが、どんな場所で、どのようなことが行われているのか、この家宝を使うとでそのイメージを具現化していただければと思います。皆様共通の思い描く“学校”を再現し、それをこの国の人々へ見せることで記憶を蘇らせることができる、と我が主は申しておりました。どうか、どうか、皆様の手で、“消えた学校”を取り戻してください!」
“願いが叶うノート”
――片岡の言うように、本当に魔法のような道具が使えるのだろうか。
疑心暗鬼の気持ちが強い六人だったが、この後、その不思議な現象を身を持って体感することになる。
ここは、本当に『異世界』なのだと――
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