付箋:執事片岡の覚え書き②

 あれから数日。

 皆様は、わたくしの無理難題に少しずつですが、たいへん意欲的に取り組んでくれているように感じます。

 あの『希求筆記帳』を使いこなし、様々なアイディアを体現されているようですね。

 完成が待ち遠しいものです。


 それにしても、わたくしも焦っておりましたので、あの『希求筆記帳』の中のことまでは皆様に詳しくお伝えするのを失念しておりました。


 頭の中にある記憶は、いろいろな種類のものがございます。

『希求筆記帳』は、その方が強く念じる思いを投影するものですので、断片的な記憶でも関連するものがあれば一緒に描き出される仕組みになっているのです。

 そして、せっかく描き出した世界に入っても、そこで迷子、“迷宮入り”されては困りますので、必ずその世界には案内役が現れる仕組みとなっております。

 ちなみに、案内役を務めるものは表題によって毎回変わりますので、例えば、動物や植物、何ならわたくしが今手に持っている『万年筆』や『ティーカップ』が話し出す場合もございます。


 どうやら今回は、『学校の記憶と関連する生き物』が案内役などを務めるようですね。


 ふむ……。


 まあ、よろしいでしょう。


 せっかく描き出しても、一緒に体験を味わえるものがいなければ、それが本当に良いのかどうかわからないですし、何より、ただの“箱”を描き出すだけではつまらないですからね。



 実際に体験してこそリアルになり、実となり、完成品に近づく。



 誰かの言葉でございましたね。




 おや、そろそろ大広間に置いてあるホールクロックの鐘の音が鳴り響きますね。急いでお食事を準備しなければ。



 さて、本日の昼食は何になさいましょうか。



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