第30話 エピローグ

 春と言うにはひんやりとした室内に、りんの音が響き渡る。

 仏前で二人の男女が手を合わせている。

「あっという間だったな」

 美濃純一がボソッと言葉を吐き出した。

「そうね、私、もっとお義父さんとお話したかったな」

 水島秋が、寂しそうにつぶやく。


 美濃健司の葬儀が速やかに執り行われ、バタバタと毎日が過ぎていった。

 葬儀には多くの参列者が訪れた。

 純一は悲しみの中、父の人望に驚くばかりであった。

 健司に対する感謝の言葉を聞くたびに、父の偉大さを感じた。中には、涙を流し今にも倒れてしまいそうな若い男性もおり、父の交友関係の広さを感じるばかりであった。

 また、会社の会長と社長のオーラは凄まじく、そこについていた秘書のような人は、凛として、素敵な立ち振る舞いをしていた。一人、ひどく目を腫らしており、気丈に振る舞いつつも心では大きな悲しみに耐えているのだと知った。

 旧友だという男性は「なんであいつが先に」と残念そうに口にしていた。

 一通り日程が過ぎ、ふと落ち着いたころに、二人は仏前に座ることができたのであった。


「秋、これから、よろしくお願いします」

「なに?急にどうしたの?」

「俺は思っているより弱いから、支えてくれると、とても嬉しい」

 少しの間をおいて秋が返事をする。

「そのつもりだから、よろしくね」

 二人は微笑み、手を握り合った。


 キーン


「「いたた」」


 耳鳴りと頭痛はすぐに治まり、二人は頭を押さえながら、目を合わせた。


 どこか春の木漏れ日のような温もりを感じて。

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頭痛 鳴平伝八 @narihiraden8

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