14.少女
「失礼しまーす…。あ、後藤さん。お疲れ様です」
「お疲れ様です、廿樂さん。時間ぴったりですね」
とある都内のビルのとある会議室。
私は、専属マネージャーの後藤さんに呼ばれてRe:Mindの本社ビルに来ていた。
なにやら直接話したいことがいくつかあるとのことで。
探索者稼業はかなり暇な時間が多いので、「いつでもいいですよ」と連絡したところ翌日には会議室を抑えてくれる優秀っぷりに頭が上がらない。
「お伝えした通りいろいろと話したいことがあるので少し長くなりますがよろしくお願いします」
「はい」
「ではまず1つ目ですが、廿樂さんの配信の反響がかなりありまして、案件の依頼というのがかなり来ております。
明らかに怪しそうなのは私の方で弾かせてもらいましたが、それでも大量でして…。
リストアップしましたので、受けてもよいと思えるものを選んでください」
渡されたリストには、高名な企業から聞いたことが無いような企業まで書いてある。
「返事に関しては時間を取らせてもらいますとは言ってあるので、持ち帰って調べながら精査してください。
お手数にはなりますが、私が勝手に受けるのもと思いましたので、決定は廿樂さんにお任せします」
「あ、はい。
Re;Mind側としては受けないといけない案件とかありますか?」
「いえ、これといって特には。
普通のライバーさんならそういうのはあったりするのですが、廿樂さんは契約ライバーですのでそういったのはこちら側から強制することはないですね」
「では持ち帰って考えます」
「はい。では、2つ目です。
コラボ依頼です。こちらも先と変わらず大量に来ておりますが…どうされますか?」
どうされますかと言われてもなぁ…。
「お任せします、としかいいようがないですね。
ああ、そういえば虚さんからコラボ配信の打診が来てましたね。Vtuberとしての初コラボは彼女がいいかな。
それに所謂、箱内コラボというやつでしょう?
女性同士のコラボだと双方に反対的な意見が出にくいとも言いますし」
「
では初コラボは彼女の方向でいいでしょう。ライバー歴もそこそこ長いですしね」
虚空さん。振り仮名がないと絶対に初見では読めないことでも有名な彼女は、この前の私のミラー配信で大々的に探索者好きであることがRe:Mind界隈には広く知れ渡ったらしい。
彼女とはSNS上でメッセージのやり取りをしただけで直接会話をしたわけではないが、配信を少し覗いてみたが、なかなか個性的なライバーだなと思った。
私と同じくと言っていいかは分からないが、愛想が無い。
だが、リスナーに対するサービスなどはライバーらしく一級品。
ダウナーな気質と声は、かなり刺さるらしくRe:Mindの中でも上位の数字を誇る、歴の長いライバーだ。
「ええ、ではその方向で」
「了解しました。段取りが完了しましたらまた連絡します」
「ああ、そういえば。ここに虚さんがいるようですが」
「…はい?」
あ、ヤバイ。突拍子もないことを言ってしまった。
「耳が良すぎるんですよ、私。
私含め、上位の探索者は身体能力と共に五感も強化されるんですよね。
普段はある程度情報をシャットアウトしてますけど、ふと聞いたことのある声が聞こえまして」
「ああ、そういった話は私も聞いたことがありますね。
虚さんは…ああ、今日はマネージャーとの打ち合わせで出社されてますね。
どうします?連絡を取ってみますか?」
「先方が宜しければお願いします」
「では」
後藤さんはそう言いカタカタとノートパソコンのキーボードを叩く。
それにしても、一般人感覚からすれば異常とも取れるものに一切動揺も見せない彼女のメンタルはどうなっているのだろうか。
身内に実力のある探索者でもいて慣れているのだろうか。いや、それなら私の専属マネージャーになったのも納得がいくが態々聞くほどの事でもないな。
「先方、OK出ましたよ。すぐ来るとの事ですが…早いですね、どうぞ」
後藤さんが承諾が取れたと言ったと共に部屋の扉を叩く音が聞こえた。
いや、早すぎん?明らかに隣の部屋にいるなとは思ってたけどさ。
「し、失礼します」
そこに現れたのは、車椅子に乗った可愛らしい少女だった。
※
お久しぶりの方はお久しぶりです、預言猫です。
期間が空いてしまい申し訳ないです。
原因としてはリアル多忙によるモチベーションの低下です。
ある程度リアルも落ち着いたのでこれからは隙間が空くかもしれませんがぼちぼち投稿していこうと思います。
これからも拙作にお付き合いいただけたら幸いです。
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