5.無明・コラボ配信②
無明という一級探索者チームからコラボ依頼のDMが数日前に来た。
ダンジョン配信をしていたので、返事をする前に少し見てみたが、若いながらも実力のあるチームだった。
DMには、自分達が実力的に伸び悩んでいることと、もしコラボできるのであれば実戦指導をお願いしたいとの旨が懇切丁寧に書いてあった。
伸び悩む時期というのは探索者として生きていくうえで必ず当たる壁と言ってもいい。
かく言う私も一時期壁に当たっていた時期があった。
それもすぐ死ぬ気でぶち破ったが。
若くして才能を持った同志…才能という言葉で語れないほどの努力をしてきただろうが。
そんな同志の
それからしばらくして配信前の打ち合わせとやらもすみ、配信当日。
無明の4人の面々は、活力に満ち溢れた顔といった感じだ。
だが少し、固い。少しばかりの違和感。
ぱっと見では素人には分からないが、なんだろうか…ああ、そうか、自信か。
確かダンジョン配信界隈では、彼らのチームが最強であると言われていたはず。
ならダンジョン内ででも高みを見たか。一級にまで登り詰めた彼らがまだ自信を持てないとなれば、一級上位、若しくは特級の力でも見たのか。
まぁ、そこにはあまり触れないでおこうか。自覚してるのは…アタッカーの新開君くらいか。
では、まず配信開始っと。
「はい、ということでこんにちは。今回はお知らせしたとおり無明さんとのコラボ配信です。
彼女たちには特級配信者の私から、探索に関して指導、助言ということで、今回彼女たちの邪魔をあまりしないようにサポーターをさせてもらう。
同時に主に中級以下には軽視されてるサポーターという役割の重要性を周知させてもらおう。
というわけで、挨拶もほどほどに探索を開始しようか」
まずは、様子見30分。
打ち合わせ通り、その時間で実力と連携の練度を見る。
その間に配信を見に来ている人、主に探索者達に向けてサポーターというものの役割について説明する。
まずは配信者としての仕事をしましょうか。
「私は今日はサポーター。いつも蹴って殴ってばかりだからそういうのを求めてる人は是非無明側の配信へ。今日はコメント返信はできないらしいからそこは注意ね。
私の配信は主に探索者、若しくはダンジョン配信者クラスタと呼ばれる方向け。」
ヘイト管理系派生スキル『誰が為に鐘を鳴らすのか』を発動。周囲2km範囲のモンスターを選択して呼び寄せていく。
ふむ、成程。
個々の実力は一級下位並だが、連携は今まで見たグループの中でも最上位。
だが、お互いのことを信頼しすぎるあまり、リーダーの本郷さんの指示以外に会話があまり無いな。
「さて、サポータについてなんだけど。探索者では主に中位、二級下位以下。そしてダンジョン配信者クラスタスレなんかではサポーターの存在が軽視されている。
ソロ専の私が言うのもあれだけど、馬鹿々々しい。」
新宿ダンジョン61階層程度では、少し余裕があるか。
安全マージンは充分取れている階層だ。今迄も、多少の無理をしてきたこともあっただろうが、探索者としては普通。
まだ、私が知っている一部の探索者のような、ダンジョンにスリルを求めたり未知を求めるような狂人はこのチームにはいない。天秤に簡単に命を乗せるような人間にはなってほしくはないが、強くなりたいという望みを叶えるならなかなかそうは言ってはいられない。
もう少し強度を上げるか。安全マージンを私だけにして…私ならこの程度のモンスター程度彼らに何かが起ころうともどうにでもなる。
「一級上位ですらサポーター専門の探索者だっている。
チームのヒーラーがサポーター擬きを熟す、というのが探索者としての定石だけど、アタッカー・タンク・ウィザード・ヒーラーの4人構成に1人サポーターを入れるだけでかなり楽になるもんだよ。
探索者になったはいいが戦闘してみて自分ではモンスターとは戦えないが探索者は続けたい。そういう人がサポーター転向するという例は後を絶たないからねぇ。
何もしてこなかった甘い人間が適当なパーティに入って、適当に探索して、適当にサポーターをやる。まぁ、そんなんじゃ不評だよなぁ。
中級以上なら固定パーティでサポーターやってるのが普通だし、配信してたりしてもサポーターってのは目立たない。
それに好評よりも不評の方が声としては入りやすいし目立つからねぇ」
思ったよりやるなぁ。
不破君は攻撃こそしないが黙々とタンクとしての役割を熟す。
間さんはスキル回しこそ上手くはないが魔力管理は一級品。魔力量を半分以下にすると起こる倦怠感を嫌っているのが欠点か。
新開君は個人としては一級中位並。チームメンバーの立ち位置や状況を把握しながら立ち回り、アタッカーとしても高いレベルの攻撃を加える。これといった欠点がない。だが逆に言えばそれだけだ。
本郷さんはリーダーとしては超一流。指示出し、モンスター探知、チームの状況把握、全てが高水準。だがヒーラーとしての腕は…こう言っては何だが一級探索者とは思えないな。
さて、彼らの実力は把握した。
ここからは指導といこう。
「うん、分かった。サポーターの話もたまにしながら、ここからは彼らに口を出していくから
おーい!ここからは口出していくからな!里奈も指示出しは私がするからヒーラーに専念!」
さて、彼らはどこまで持つかな。
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