第四章

本当に葉山くんは、私が主人公の物語を作るようになった。

嬉しいという感情と一緒に『何で葉山くんはあんなに優しいんだろう?』という疑問ができた。


二週間後、物語が完成した。

「蝶花!完成したよ。」

「本当!?題名は?」

葉山くんは息を深く吸ってから言った。

「主人公にあこがれた君へ」

失礼かもしれないけれど、あまりしっくりこなかった。

「主人公にあこがれているのは葉山くんも同じなんじゃないの?だから書いたんでしょ。」

ずっと思っていたことを、初めて葉山くんに言った。

「そうだよ。俺、中学生のときずっと恋愛小説読んでてさ、『男なのに』ってずっといじめられてた。だから蝶花が、私も物語の主人公みたいになりたい。って言ってた気持ちがめちゃくちゃわかった。だからつくろうって思った。」

「そうだったんだ。」

葉山くんが『友だちいない』と言っていた理由が少しだけわかった気がした。

「じゃあ、題名は……」

「主人公にあこがれた私たちへ」

二人の声が重なった。

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主人公にあこがれた私たちへ 春野蕾 @harunotubomi

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