陽の章 第十六項 ~真青~


捜していた結末が、そこに無かったとしても、

求めていた奇跡が、起きなかったとしても、

どうかこの書を後世に残して欲しい。

何故ならこれは事実だからだ。

ここに記すのは、私自身の歩んできた人生であり、

そして我が先代達の残してきた気高き歴史だ。

私の言葉では表し切れないほどの偉大な功績が、

それを為すまでの重大な決意が、

誰にも伝えられることなく、時は流れていく。

私が素晴らしいと思う者達を、その尊い想いを、

先の世の誰も知らずにいるのが、私は歯痒くて仕方がない。

だからどうかこの書を後世に残して欲しい。

そしてこの書を読んだ者の中に、

私と同じことを思い、

私と同じように筆を執る者が現れることを願わずにいられない。



陽の章 第十六項 ~真青~



かつて巨大な獣であった肉塊は容易く処理できるものではなく、

まだその場に打ち捨てられたまま、強烈な血臭を放ち続けている。


死臭が届かない程度に離れた場所に集った者達は、

異様な緊張感で満たされた空気の中、

誰もがただ一人に視線を注がずにはいられなかった。


かの獣を一撃の下に葬り去った、不詳の剣士。

否、不詳という言葉は相応しくはないだろう。

何故なら、少なくとも目の前に凛然と佇む剣士の、

髪の色を見れば、瞳の色を見れば、

獣の命を食い破った氷華を見れば、

その素性が「青」であることだけは明白だからだ。


だからこそ、この場に居合わせた誰もが、

視線を注がれる本人と、その傍に佇むアルム以外の誰もが、

言葉を失い、ただ見入ることしか出来ない。


「……先程は」


誰もが口を噤む中、

レフィアが一度大きく息を吸い、意を決して口を開く。

短く発したその声には、

レフィアには滅多に見られない動揺の色が滲んでいる。


「我々の危機を救って頂き、有難うございました。

 貴女のことは、何とお呼びすれば?」


青髪の剣士を真っ向に見据え、レフィアが問う。

その問いの向かう先にゆっくりと視線を戻したフィアシスが、

場違いだと思いながらも心に浮かべたのは、

ただ美しいという一言だった。


否が応でも目を惹かれる鮮青の髪は、

真っ直ぐで滑らかで、絹糸のような光沢を放っている。

瞳は、彼女が振るった刀の刃と同じ色。

青の聖魔石『ラズライト』も、きっとこんな色だったのだろう、

とフィアシスに思わせる輝きだ。

面立ちは見るからに凛々しく、美しい。

切れ長の眼に、整った柳眉、通った鼻筋、薄い唇、はっきりとした輪郭。

全体的に柔らかな印象の白の王族とは違った、鋭さを感じる面立ちに、

レフィアよりも更に拳一つほど高い上背が、その印象を高めている。


「拙者の名はミヅキ。

 堅苦しい敬称など無しで、呼び捨てて貰って構わぬよ」


レフィアの問いに答える落ち着いた声は、

女性としては低めだが透明感があり、耳心地が良い。

やはり場違いだと思いながらも、フィアシスとしては、

もっと、ずっと聞いていたいと思わせる声だった。


アルムと同じく、レフィアに対する謙譲は全く見られないが、

アルムと違うのは、少なからず友好的な響きを感じることだろう。


「では、ミヅキ。

 一つ、答えの分かりきった問いをしても構いませんか?」


一人で見惚れ聞き惚れるフィアシスを余所に、

レフィアが更にミヅキへの問いを重ねる。

慎重に言葉を選んでいる、とフィアシスにも感じられる語調だ。


「ああ、構わぬよ」


「貴女は……青の国の者ですね?」


意を決するように間を置き、レフィアが言い放つ。

周りの近衛や騎士達が小さく息を呑む音が聞こえた。

それは、この場にいる全員が確証を持ちながらも、

それでも信じられない、認められない言葉だ。


青の国ツキカゲと、黒の国ディメイルは、

六色の聖戦に於いて、

守星神シルヴィエと異邦人アルムとの戦いで、消滅した。

この世界に生きる誰もが、そのように知っている。

聖戦から遥かな時間を経たリハデアに、

青の国の人間がいることなど、有り得る筈がない。


アルムは、赤の王女ティニアとの戦いの中で、

黒の紡月を発現してみせた。

ただそれでも、黒鉄の兜で覆われた素顔は未だ知れず、

本当に黒の人間なのか、と疑う向きも多い。

フェナスは、アルムと同じく黒の装束を纏いながらも、

その髪と瞳は白だった。

だが、ミヅキは違う。

彼女は初めから何も隠さず、その真青を晒している。


「ああ、その通り。

 この髪で白の民と言っても、信じる者はおらぬだろう?」


さも当然の如く、垂れ髪を右手に取って乗せ、

自らを青の国の者だとミヅキは答えた。

その表情に、声に、偽りも嘲りも感じられない。


「青の国の生き残りである、という事ですね?」


「生き残り……

 まぁ、生きておるのだから、生き残りか」


レフィアが改めて別の言葉で続けた問いに、

ミヅキは、今度は僅かな思案の素振りを見せた。


「含みのある言い方ですが……?」


「いや、気にせずとも良い。

 凡そお主らの考えておる通りだ」


表情や言葉の調子からしても、ミヅキにはフェナスのような、

人を揶揄うような気質は感じられない。

フィアシスが感じるその印象は、レフィアもまた同様だろう。

自らの問いに対して言葉を濁すミヅキに対し、

レフィアは僅かに眉を顰めたものの、

その表情は、すぐに納得のものに変じた。


「では次の問いですが、貴女とアルムの関係は?」


次にレフィアが放った問いを聞いた瞬間、

フィアシスの肩がピクリと一度痙攣したのは、無意識のことだった。

彼女がアルムを伴って現れた時点で、

そこに疑念を抱くのは当然だった筈だが、

フィアシスはまるで不意打ちで背を突かれたかのように、

心の内に湧き上がる動揺を隠せない。

心臓は見る間に鼓動を早め、息が自然と浅くなる。

脳裏には、青や黒が云々といった事情よりも、

『アルムとミヅキの関係』の言葉から浮かぶ、

憶測と呼ぶにも値しない妄想が次々に駆け巡っていく。

そして、妄想の行き着いた先は、

フィアシスにとって、最も残酷な光景。


(ミヅキ……私はお前のことが……)


(アルム……拙者も……)


「拙者は、こやつの剣の師だ」


ぐるぐるとぐつぐつと煮える妄想に冷水を浴びせるが如く、

ミヅキが短く言い放った。

忽ち正気を取り戻したフィアシスは、

何時ぞやのアルムとの会話の内容を思い出し、

そして改めてミヅキの出で立ちを注視する。

剣の師。

中庭で剣の稽古をしていたアルムが、その虚像と闘っていたという相手。

アルムが、自分よりも上だと、最強だと語った剣士。

赤の王女すらも圧倒するアルムをして、そこまで言わしめる者。

であるならば、とフィアシスは得心する。

元々、アルムの振るう片刃の長剣を用いた剣術は、

ツキカゲのそれと目されていた。

そして、先程のミヅキが放った突きの一撃。

宙に浮かんでいたとはいえ、獣の巨躯を薙ぎ倒すほどの凄烈さ。

それもアルムの師であるならば、とフィアシスには納得のいくものであった。


「……貴女とアルムは、どこで出会ったのですか?」


レフィアはなおも問いを重ねる。

それは自分も知りたい、と思う一方で、

ミヅキが口を開く前から返答を予想できるものでもあった。


「それは答えられぬ問いだ。

 いずれ、拙者以外の誰ぞから伝えられよう」


アルム然り、フェナス然り。

アルムに連なる者達は、この地に至るまでを問うても答えない。

もしもフィアシスが、女王と言う立場でこの場にいたならば、

きっと、アルムやミヅキ、ミヅキの言う「ミヅキ以外の誰か」について、

問い詰めることを我慢できなかっただろう。

しかし、レフィアは早々に答えは望めずと判断したのか、

ただ静かに瞼を伏せるだけで、追求の気配すらも見せない。


「では、次の問いを。

 貴女がこの地を訪れた目的は?」


再びミヅキを真っ直ぐに見据え、レフィアが問う。

それは、きっとアルムにも向けた問いだろう。

前触れもなくこの地に現れた、禁忌の名を騙るアルム。

素性も明かさず、目的も明かさず、何も明かさぬままに、

レフィアの求めに応じる形でフィアシスの親衛隊隊長となり、

その責務を忠実に果たす黒。

友を自称するフェナスは白。

師を自称するミヅキは青。


「……」


ミヅキが、口を閉じて思惟の様子を見せる。


フィアシスは、そこから何かが静かに変わっていくのを感じた。

ミヅキの表情は変わらない。

微笑という言葉がいかにも似つかわしい、慎ましやかな笑みはそのままだ。

だから、フィアシスは感じている変化は、目に見えるものではない。

先の氷の紡月のように、物理的な温度の変化があるわけでもない。

ただそれでも、身体の奥から吹き出す冷たい震えが止まらない。


不安から、思わずレフィアを見る。

レフィアの表情は明らかに強張っていた。

きっとフィアシスと同じものを感じているのだろう。

気配、あるいは予感とも言うべき曖昧なものに、

レフィアが傍目に分かるほどの警戒を見せている。


「お主らに、宣戦布告をしに」


暫時の沈黙の後、短く放たれた言葉。

それは、この場にいる全ての者を凍てつかせるに足るものだった。

誰もが微動だにしない。息を呑むことすらも出来ない。

風の音すらも無い、ただただ無音の時間が過ぎ去っていく。


まるで現実味を帯びない言葉だった。

赤の第一王女がその言葉を放ったならば、誰もが納得するだろう。

凄絶な戦いと、築かれる屍の山を、想像できるだろう。

だが、目の前にいるのは、アルムとミヅキだ。

アルムは、フィアシスと白の国を守ると言った。

ミヅキは、フィアシス達に迫る危機を退けた。

それがどうすれば、宣戦布告などという言葉と結び付こう。


もし戦うとなれば、一体どんな戦いになるというのか、

フィアシスには想像もつかない。

赤の王女『緋鳳』ティニアを軽々と打ち負かし、

この世に敵なしとまで民衆に謳われるアルム。

そのさらに上を行くというミヅキ。

ティニアが一騎当千と呼ばれるならば、

きっとこの二人に対して、

何千、何万といった数字さえ意味を為さないのだろう。


戦いに疎いフィアシスの頭が思い浮かべるのは、

創作の物語の中、そこに描かれる戦いの中で、

人の域を逸脱するまでの力を得た主人公や敵役だ。

敵のあらゆる攻撃を回避し、無効化し、

剣の一振りで敵の一団を薙ぎ払うような、無双の存在だ。


アルムが、ミヅキが、もし本当に自分達に刃を向けたならば、

自分はどうすれば良いのだろうか。

フィアシスは自分のアルムへの想いを自覚している。

未だ誰にも明かさずいる想いを守りたいと思っている。

だが、自分は白の国の王女だ。

白の女王レフィアの娘だ。

アルムが白の国に刃を向けるというならば、

自分もそれに立ち向かわなければならないのだろうか。

ああ、まるで、悲劇の主人公のような展開だ。

フィアシスが現実と虚構を入り混ぜた妄想を始めたところで、


「と言うのは、まぁ軽い冗談なのだが」


またしても、ミヅキから冷や水を浴びせられた。


「たった二人で宣戦布告などと、一笑に付されるかと思ったが、

 いや、なかなか思うように受けぬものだな」


今までの微笑とは打って変わって、ミヅキが朗らかに破顔する。

だが、この場に居合わせた白の者達が叩きつけられた恐怖は、

冗談などという言葉で和らぐには冷た過ぎた。

未だ、誰もが表情を硬直させたまま、喉を引き攣らせるだけで、

息を吐くことすらもままならない有り様だ。


「ミヅキ、今のは私でも笑えない。

 冗談ならば、せめて殺気を放つのは止めろ。心臓に悪いぞ」


そんな中、ミヅキの隣に佇むアルムがミヅキを諫める。

心臓に悪い、という言葉の通り、

アルムの口調には僅かな焦りが滲んでいるようだった。

フィアシスからすれば、

アルムの声にここまではっきりと感情の色が現れたのは初めてのことだ。

そこまでアルムを動揺させる言葉だったのか、

或いは、ミヅキとの間ならば、

アルムはこれくらいの感情を込めて話すものなのか。

そこに思い至っただけで、

フィアシスは再び妄想の世界に旅立ちそうになるが、

未だ抜け切らない緊張と恐怖が、辛うじてそれを押し留めた。


「ふむ、流石にやり過ぎたか」


どうやら、ミヅキにとっては本当に冗談のつもりだったらしい。

アルムの言葉を受け、ミヅキが腕を組んで首を捻る。


剣の師弟という関係でありながら、

アルムからミヅキへの言葉に尊敬も謙譲も無いことを、

フィアシスは僅かに疑問に感じはしたものの、

寧ろアルムが敬語で話す方が不自然だ、

自分の知るアルムのままで良かった、と早々に結論付け納得する。


ミヅキは暫く悩むように目を伏せた後、再び顔を上げると、

レフィアに向き直り、言葉を続けた。


「目的を問われておったが、それも来るべき時に話そう。

 それまでは、こやつと共に白の国に留まろうと思うが、構わぬだろうか?

 認められぬならば、こやつ共々緑の国にでも行こうと思うが。

 赤とは既にこやつが一戦交えたと聞いておるし、

 拙者としては、八尾のファナンを見ておきたくもある」


レフィアの問いには答えず、ミヅキは自らの要求を語る。

初めから受け入れられる前提で話している、

とフィアシスが感じるような口調だった。

「否と答えれば、アルムを連れて行く」というのは、

アルムがフィアシスの親衛隊隊長という立場にある今、

半ば脅しとも言えるだろう。

同時に、アルムはレフィアの下知よりも、

ミヅキとの随行を、ミヅキの意志を優先するということが、

前提として示された形だ。

加えて、ティニアとの交戦と並べられた、

ファナンを見ておきたいという言葉は、レフィアの不安をも煽っている。


「来るべき時、というのは」


「まだ言えぬ」


「……そうですか」


敢えて要求に対する答えを避け、問いを重ねようとするレフィアに対し、

突っ撥ねるようにミヅキが短く言葉を切る。

問いを続けたとしても、

アルムとミヅキの素性や過去について、

その目的についての情報は引き出せそうにない。

ただ少なくとも、

それらをいずれ語るつもりがあるということと、

白の国に留まるのが都合が良いということは、ミヅキの言葉で示された。


「分かりました。王城への滞在を許可します」


であるならば、レフィアの答えは即断即決だった。

ミヅキの宣戦布告で一度は引き攣っていた表情も、

いつの間にか平時のそれに戻り、

いつものように穏やかな声色で、ミヅキの要求を呑んだ。


「フィアシスの親衛隊の長を務めるアルムを失うわけにはいきません。

 アルムと、アルム以上の剣の腕を持つというミヅキが他国に身を寄せる状況は、

 我が国にとって極めて憂慮すべき事態です。

 答えられないなら構いませんが、

 貴女達の目的は、我が国に害を為すようなものではないのですね?」


「ああ、それはない」


「分かりました。今はそれで十分です」


ミヅキから得た答えに、レフィアは確りと頷く。

無論、それを信じるに足る証拠が示された訳では無い。

強いて挙げるとするならば、

未だ目的を明かさぬアルムの今日までの行いが、

白の国に害するものではなかった事こそ、証拠と言えるだろうか。

或いはレフィアは、アルムと初めて対峙し、

フィアシスの護衛の任を与えた際に、

アルムに対しても同じ問いを投げていたのかも知れない。

レフィアの最傍の臣下である大臣が居合わせたならば、

忠言の姿勢を見せもしただろうか、

などとフィアシスが考えを巡らせていたところで、


「フィアシス。

 貴女も構いませんね?」


レフィアが、不意にフィアシスを振り返り、問うた。

まさか自分の意が問われると思ってもみなかったフィアシスは、

言葉にならない狼狽の声を漏らしながら目を泳がせる。


今の今まで、フィアシスには気に掛けるだけの余裕は無かったが、

周囲の騎士達の表情は一様に硬く、当惑の色が強く浮かんでいる。

アルムの存在は、その素顔が隠されているだけに、

実のところ中身はレフィアが信頼を置く誰かであり、

だからこそフィアシスの護衛にまで据えられたのだろう、

と、納得してきた者も少なくはなかった。

だが、ミヅキは憶測の余地もない青だ。

女王が臣下の異議の暇もなく決断を下したことを、

より不可解に感じる者もいるだろう。


「私は……」


当てもなく彷徨っていたフィアシスの視線が、

自然と、アルムに結び付いて止まる。

硬い黒鉄の兜からは、全く感情など読み取れはしない。

フィアシスの方を向いているのもきっと、

レフィアの問いに対する答えを待っているだけなのだろう。

だがそれでも、アルムは自分を見守ってくれている、

その視線には幾許かの優しさが伴っている、

たとえ根拠が無くとも、フィアシスにはそう感じられた。

だからフィアシスは、


「……私も、受け入れるべきだと思います」


躊躇いのない声で答えた。

ただアルムが恋しいからというだけではない。

アルムが信じるに足ると思うからこそ。

アルムが誇るように語ったミヅキであれば。

それはフィアシスにとって十分に根拠たり得るものだ。


「決まりですね。

 ミヅキ、我々は貴女を白の王城に迎えます」


フィアシスの決断をどう捉えただろうか。

レフィアはフィアシスに向けて小さく微笑むと、

再びミヅキに向き直り、改めて滞在の許諾を告げた。


「うむ。感謝する」


ミヅキは頷き、謝辞を口にする。

ただそれだけでも、アルムよりは幾らか常識的ではあるが、

やはり一国の女王を前にした態度ではない。

たとえ大臣でなくとも、この場にいる騎士や侍従の誰かが、

不敬であると刃を抜き放っても不思議ではないし、

アルムという前例が無ければ、きっとそうなっていた。


「それでは、ここでの話はこれまでにしましょう。

 ファナン様をお呼び立てしている以上、私は残らねばなりません。

 アルムとミヅキは、先に王城へ。私の侍従を一人付けます」


言うが早いか、レフィアは侍従の一人に目配せをする。

侍従は小さく頷くと、少し離れた場所に留まる馬引の方へと駆けていった。


「ふむ、従おう。

 緑の女王とは、またいずれで良かろう」


素早く動く侍従の背を目で追いつつ、ミヅキは独り言のように呟く。

その口ぶりはまるで、

自分が望めばいつでもファナンに会えるとでも言わんばかりだ。


「フィアシス。貴女もアルムと共に戻りなさい」


「はい」


フィアシスの親衛隊隊長であるアルムが王城に戻るということは、

フィアシスもまた王城に戻るということだ。

因果関係としては逆だが、現状としては不思議なことではない。

レフィアの指示にフィアシスは素直に頷くが、


「大臣への説明は任せました」


「はい、えっ、いや、それは……」


レフィアが悪戯っぽく続けた指示には、

苦笑を浮かべ言葉を濁すことしか出来なかった。

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