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 真波を小菅生花店に帰す柳下。小菅は心配そうな顔をして、店のシャッターを開けた。


「すいません、出勤前にお借り致しまして…」

「ど、どうしたんだ真波ちゃん…?」

「相川さんが…」

「えっ?」

「相川さんが、殺人犯だったんですよ」

「そんなっ…」

「奥様と共同経営されていたカフェの創設から、相川さんの奥様はいらしたんですね?奥様の、お姉様が」

「えぇ…」

「事情は聞きました。お察しはしますが、それで殺人を正当化など絶対にしてはいけない」


 小菅は唇をかんだ。


「私が、鈍感なばっかりに…」

「貴方が責任を感じる事はありませんよ」

「そうよ、お父さん」


 小菅ははっとした。そして真波のほうを見る。


「さっき、なんて…?」

「お父さん、でしょ?あなたは」

「うぅ…」

「だから、お父さんもあたしの事、真波ちゃんって呼ばずに、真波って呼んでね」

 

 二人は熱い抱擁を交わしていた。柳下は川崎の肩を叩いて、背を向けた。


「ん?お前…」

「えぐっ、えぐっ」

「すっげぇ泣いてるじゃねぇか…」

「えうぅ、あっ、だっ、こう、うぅ、のっ、だ…だえっ…」

「何て喋ってんのかわかんねぇ!後で聞いてやる!」

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