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「ごめんください」
山浦は【小菅生花店】のドアを開いた。中には小菅と、タクシー運転手の相川がいた。
「あれ?運転手さん?」
「はぁ、あなたはあの時の…」
「このへんのお店では、相川さん知らない人はいませんからね。タクシー運転手歴長いし。で、どうなさったんです?」
山浦と川崎は顔を見合わせて頷く。
「昨日未明に、夜叉ヶ池八郎さんの秘書の斑鳩カオリさんが亡くなられまして」
「はぁ」
「その現場に、真波ちゃんがいたんですよ」
「え?どうして…」
小菅は目を真ん丸にして訊いた。山浦は続ける。
「確か、小菅さんは亡くなられた奥様とは再婚だとか。真波ちゃんは、奥様の前の旦那さんの連れ子なんですね?」
「ちょっと刑事さん。それ関係あります?」
「いやぁ、相川さん。人が亡くなってるんですよ。こちらとしても早期解決の為には疑いを晴らさないといけませんから」
「そうは言っても…」
「そりゃ、真波ちゃ、真波は妻の元夫との娘です。多分本人はその事を知らない」
「ですね」
「これで良いですよね」
「しかし、何かのきっかけでそれを知った。真波さんは、誰かを庇ってるとか…」
「ふざけるのも良い加減にしてくれないか!」
相川が声を荒げた。
「いやいや、こっちも疑うのが仕事ですからね。それに、小菅さんが犯人だとも思っておりませんから」
「小菅さん、出てってもらいましょうよ」
「…」
「小菅さん!」
「…私でよければ、お話し致します」
「小菅さん!」
「いや、僕も何もしていない、そして真波も潔白だ。それを証明できたらすぐに元通りになる」
「そういう事です」
「でも、パトカーに乗るのはちょっと…」
「小菅さん、なら俺が連れて行きますから」
「相川さん…」
「刑事さん、小菅さんの無実を証明してくださいよ」
頷いた山浦と川崎は、パトカーに乗り込む。川崎は唇をわなわなと震わせている。
「なんだよ」
「なんか、その、怖かったっす」
「あのタクシー運転手が?」
「なんか、センパイが…」
「アホか、あのくらい憎まれる演技しなきゃダメなんだよ」
「え?演技?」
「ホントは、誰も疑いたくなんかねぇんだよ」
「じゃ、なんで刑事に…」
山浦は窓の外を見ながら言った。
「刑事でいる事は、俺にとっちゃ呼吸みたいな…」
「ふぇくしょんっ!」
「っざけんなコラお前はっ!」
「ひいぃっ、す、すいませんっ!」
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