第34話 覚醒の刻
鎖を従え、光速のまま空を駆け回るアストラルは、胸中に秘める己の信念と向き合うように目を伏せていた。
何故、ギガノスの幹部という強大な戦力に、どこの誰かも分からないアストラルが居座っていたのか。しっかりと、明白な理由をもって、その選定が意味をなしていたのだ。
シェルデンの魂による力は、単純な『洗脳』ではない。他者の深層意識を覗き込み、その根源に語りかけることにより、思考を捻じ曲げる。ペテン師まがいの言葉巧みな有象無象により、深層意識は操り人形となるのだ。
そう。他者の深層意識を覗き込む魂を持つシェルデンは、アストラルの中に眠る
アストラルの根幹に眠る、未だ目覚めないその力。自身が認められていないような、むず痒い感覚が包み込んでいる。信念の元、彼自身がすべきこと。そんなものはとうに分かっているつもりなのだが。
ギガノスを、跡形もなく潰したい。消し去りたい。同じ想いを宿した仲間が集い、決戦に身を投じて尚、アストラルという男にその力は微笑まないというのだろうか。
などと、舌打ちと共に思考から吹き飛ばす。今は相対するルノウに勝つことだけ、それだけを目的に、弾切れを今か今かと待ち続けている。
走り回る視界に、一つの影が見える。足場代わりに生み出した剣が次々と爆破を連鎖して、橙の空虚から逃れるシズクの姿が見えた。出鱈目な魂を持つとはいえ、人間の可能域で動いているのだ。影を追う爆風は、すぐにでも追いついてしまうだろう。
「シズクッ……‼︎」
『
「悪い、助かったよアストラル」
「……いや、助けられたのは俺の方だ」
凄く、簡単な事だったのだ。すぐそこにあったはずなのに、何故か気付かなかった。それ程までに、ギガノスへの憎悪に支配されていたという事だろう。
己を縛っていたギガノスへ、復讐をしたい。それではなかった。何故ギガノスに憎悪しているのか。疑いの根本に、それはずっと座っていたのだ。
失いたくないから。仲間も、居場所も、未来も。
この力は、破壊ではない。守護のための力だ。
「シズク。頼みがあるんだが、いいか」
「どうした、いい策でも浮かんだか?」
シズクの扱う『
「確か、二十八ページ。俺の魂に似てたから、覚えてる」
穴が開くほどこの図鑑を読み込んでいるシズクは、その数字だけで、アストラルの真意を見極めた。
「……気をつけろよ」
アストラルは抱えていたシズクを地に降ろし、二体二を向かい合う。ルノウとサニアが合流してしまったが、これからの作戦には都合がいい。
「……頼んだぞ」
「あぁ。ところで、ソレは『
潰すための力ではない。守るために潰す力。従来の『
「
鎖も、爆発も、何一つとてこの身体に追いつくことはできない。瞬時に消えた影を追い、ルノウとサニアは首を回し始める。だが、それもまた無駄に等しい。この速度に追いつける奴など、一匹の白い虎程度しか心当たりが無いのだから。
「
シズクが、『
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