私の指示に従えば間違いありません


 取引先のジェームズ氏は俺より一回り大きかった。


 早速、AIに活躍してもらおう。

 グデゴマを起動して……


「はじめまして。お会いできて嬉しいです」


「こちらこそ、今回はよろしくお願いします」


 ジェームズ氏ははにかんで、こちらに向けて手を差し出した。

 よし、ここで握手をして……


『待ってください。ここは日本ではなくアメリカです。銃やナイフを隠しているかもしれません。軽率な接近はやめるべきです』


 そんなことある?


『あなたは日本人なので、分かっていないのです。私の指示に従えば間違いありません』


 そうかなあ。


 と、妙な間が空いたせいで、ジェームズ氏が手をひっこめてしまった。


「どうかされましたか。海外に出たのははじめてと聞きました。体調が悪いなどございましたら何でも申し伝えください」


 何か言われた気がするんだけども、長くて聞き取れなかった。

 どうしよう。


「グデゴマ、さっきの彼の台詞は何て言っていたの?」


『握手しない理由について訊いているようです。どうか、お任せください。AIの私がきちんと受け答えします』


 頼もしいな。

 俺はジェームズ氏に聞こえるように端末の音量を上げた。


『なぜなら彼はゴルゴ13サーティーンのファンだからです』


 ん、なんかゴルゴとかサーティーンとか聞こえたんだけど。

 気のせいかな。


「ゴルゴ13とは何のことですか?」


『ゴルゴ13とはさいとう・たかを作の漫画作品ゴルゴ13に登場する超A級スナイパーの主人公です。その頭文字から【G】とも呼ばれます。しかし普段自らゴルゴ13と称することはほとんどなく、デューク・東郷の名で通っていますがこれもまた偽名とされています。あらゆる悪条件からの狙撃を成功させ、世界の要人から絶大な賞賛と恐怖を集めています。狙われればアメリカ大統領でも助からないとされ、それ故に、神、モンスター、死神、黄色い魔神といった数多くの異名を持っています。性格は寡黙・冷徹・完璧主義であり、自他ともに一切の妥協を許しません。また自身のことを「臆病」と形容するほどに用心深く、彼の後ろに立ったものは理由を問わず攻撃され、彼の狙撃しごとを見たものは抹殺されます。あらゆる人間的感情を排しており、相手が依頼人でも挨拶はせず、情による説得に対しても拒否を示します。彼への膨大な依頼料にも関わらず、依頼者は……』


「長いので、まとめていただけませんか?」


『つまり彼は超一流の暗殺者です』


 ん?

 ヒットマンという単語あたりからジェームズ氏がざわついたんだけど、大丈夫かな。

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