AIさえあればアメリカ行ってもコミュニケーションできると思ったのに

脳幹 まこと

私の通訳は絶対信頼出来るものです

 会社の無茶振りで海を渡ることになった。


 日本でのほほんサラリーマンライフを送っていた俺にとって、これが青天の霹靂へきれきだったのは言うまでもない。

 ただでさえ海外経験がないのに、加えて交渉までしなければならないのだ。

 無理無理と力いっぱい否定し続けた俺だったが、実にえげつないやり口で追い込まれ、最終的には頷く他なかった。

 その経緯だけでも話にはなるだろうが、今回は割愛させてもらう。



 渡米当日になっても、誰も見送りに来なかった。

 社内チャットで上層部から「大丈夫大丈夫、今は通訳AIもあるから楽勝だって。AIの通訳聞いてメモるだけでカネが貰える。よっ、この給料泥棒!!(意訳)」と送られたくらいだ。

 

 画面をたたき割りたい衝動に駆られつつも、俺は今回の相棒を呼び出した。


「今日はよろしく、グデゴマ」


『はい、お任せください。私の通訳は絶対信頼出来るものです』



 グデゴマ。

 我が社のノウハウを詰め込んで作られた多機能で高性能なAI……との触れ込みだ。


 使ってみる限り、まったく興味のない広告をバンバン表示させてきたり、体調不良の改善にフルマラソンを提案してくるほどには性能が良い。


「怖いなあ。海外ってはじめてなんだよなあ」


『心配しないで。これから向かうのは自由の国・アメリカ。あなたのような方でも優しく受け入れてくれるでしょう』


 なんかトゲのある言い方だが、きっと励まそうとしてくれているのだろう。

 そうして俺は交渉場所へと向かった。

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