第14話 特別な人
「で、何かイベント的なことは起きたのか?」
新学期、教室に着くと晃太から誕生日会の後に何かあったのではないかと聞かれた。
「いや……起きてない」
「変な間あったけど。もしかして事故的なことが起きたとか?」
あの場にいなかったはずの晃太がなんで知ってるんだよ。
「ははぁ~ん、なるほどやっぱりそうか」
顔に出ていたらしく晃太は俺が何も言っていないのに納得していた。
「俺は、何も言ってないぞ」
「いやいや、碧は、顔に出やすいんだよ」
晃太とそう話しているとあまり話したことがないクラスメイトの女子が話しかけてきた。
「鴻上くん、ちょっといい?」
「えっ、俺?」
その女子は、いつも瑞季とよくいる1人である小笠原さんだった。もしや俺知らないうちに小笠原さんに何かしてしまったのだろうか。
「そう、あなたよ。ちょっと廊下出て」
言い方怖いし、俺今から何されるんだ?と思いながらも俺は、言われた通り廊下に出た。
「な、何かな小笠原さん……」
「なんか警戒してない? あっ、もしかして私、怖いって思われてる?」
表情固いのかなぁと呟きながら彼女は、頬を自分の手でつねり出す。何を見せられてるんだろうか。
けど、なんか小笠原さんのイメージって怖い感じだったけど思ってたより優しそうな人で驚いた。
「あの……要件は?」
「あぁ、えっとね……瑞季のことで聞きたいことがあるんだけど……」
瑞季のこと!? えっ、まさか2人でいるところ見られたとか?
「冬休み、私、瑞季と鴻上くんがいるところ見たんだけどさ、2人は付き合ってるの?」
なんかそんな感じしたけどやはりそうだったか。日頃瑞季の側にいる人に見られたらそりゃいつもと格好が違ってもバレますよね。
「付き合ってないよ。露崎とは……友達ってだけで───」
「と、友達!? 教室で仲良くしてる感じあんまりないけど。どこで仲良くなったの? 何をきっかけに?」
グイグイと質問攻めに合い、俺は、一歩後ろに下がると彼女はハッと我に返った。
「ご、ごめん。瑞季ってモテるじゃん……けど彼氏はいないみたいで告白も毎回断ってるから誰か好きな人でもいるのかなぁ~って思ってて……」
「……露崎とは放課後に話したのがきっかけでたまに話す程度の関係だよ」
間違ったことは言ってない。懐かれてるとは言わないが……。
「そうなんだ。鴻上くんは、瑞季のこと興味なし? クラスの男子ってほとんど瑞季のこと好きっぽいけど」
「露崎のことは────」
「おはようございます。鴻上くんに小笠原さん」
後ろから挨拶され、後ろを振り返るとそこには瑞季がいた。
「おはよう瑞季」
「えぇ、おはようございます。お二人は何を話されていたのですか?」
口にはしてないが瑞季からはなぜ朱里さんと碧くんが?みたいな雰囲気が出ていた。
「えっ、えーとなんだっけ?」
小笠原さん、こういう時に「えー」とか言ったら余計怪しいですよ。
「鍵落としたみたいでさ小笠原さんに拾ってもらったんだ。なっ? 小笠原さん」
察してくれーと祈りながら彼女の方を見ると小笠原さんはうんうんと頷いた。
「そうですか」
そう言って彼女は教室の中に入っていった。なんかよくわからないがどっと緊張が抜けた。
「あの、小笠原さん。露崎と出掛けてたことは誰にも言わないでほしいんだけど……」
「うん、別に誰かに言うつもりはないよ。言ったら他の男子から何か言われそうだもんね。あっ、聞きたいことは聞けたし戻っていいよ」
瑞季のことをどう思っているかの質問には答えられなかったが、彼女は満足そうに教室に入っていったので俺も遅れて入った。
「小笠原さんと何話してたんだ?」
戻ってくると晃太が話しかけてきた。
「いや、小笠原さんに俺と露崎がいるところ見られてたらしい」
「おっ、また1人秘密の関係がバレてしまったか」
「何だよ秘密の関係って……。ただの友達だ」
「へへぇ~。ならそのただのお友達であることを俺以外の他の男子に言えるか?」
「それは……言えないな」
言ったら翌日から今日の小笠原さんみたいに質問攻めにあってしまう。
「おっはよ~2人とも。何話してたの?」
新学期初日から元気に挨拶してきた香奈の隣には先ほど会った瑞季もいた。
「いや~碧と露崎さんが誕生日会の後、何かあったみたいでさ」
「えっ、なになにその話聞きたい!」
香奈が食いついてくるが当然俺も瑞季もあの日の出来事は言えるはずもなく。瑞季は、思い出したのか顔を赤くしていた。
「だ、ダメです……。あ、碧くんと私だけの秘密なんで」
「も~可愛すぎだよ、みっちゃん。聞きたいけど我慢するね」
瑞季に抱きつきそうになるので俺は、香奈と瑞季の間に入る。
「はいはい、瑞季が困るから」
「碧の許可がなくてもみっちゃんの許可があればいいんですー」
「露崎さん、碧に何かされたならいつでも俺か香奈に相談するんだよ」
俺と香奈が言い合ってる中、晃太は瑞季に話しかける。
「大丈夫ですよ。碧くんは、優しい方ですから」
「まっ、そうだな。碧は、いい奴だからな。ところで露崎さんにとって碧は、どういう人?」
教えてはくれないと思いながらも晃太は、瑞季に尋ねる。すると、彼女は手を胸に当てて口を開いた。
「碧くんは、私にとって特別な人です」
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