第11話 これからも私のそばにいてくれますか?

 12月26日。香奈が瑞季への誕生日プレゼント選びに付き合ってくれるそうでショッピングモールへ待ち合わせになっていたのだが、なぜか晃太もいた。


「で、なんで晃太もいるんだ?」


「碧が彼女にプレゼントをあげると聞いて来た」


 ここで帰れというわけにもいかず3人で店へと向かう。


「みっちゃん、何がほしいって?」


「ヘアピンとかシュシュっだってさ」


「なるほど~なら、あそこの店に行こっか。あっ、パンケーキ美味しそ~。晃太、今からここに2人で────」

「おい、何しに来たんだよ」


 俺がいなかったらおそらく香奈は、晃太と2人でこのパンケーキ屋に入っていただろう。目的を忘れられるところだった。


「今日は無理だから次、来た時に来ような」


「うん、行こうね」


 両サイドでデートの約束をしないでほしい。てか、なんで隣同士で並ばないんだよ。


「そう言えば誕生日会誰の家出やる? みっちゃんの家は前にクリスマスパーティーやったし、次は碧の家にする?」


「そうだな。帰って親に聞いてみる」


「うんうん、碧の作るケーキ楽しみだなぁ~」


「言っておくが、お前が主役じゃないからな?」


「わかってま~す。晃太も碧の作るケーキ食べたいよね?」


「うん、食べてみたい」


 だから話すなら移動してくれ。あっ、俺が移動すればいいんだと思い晃太の右隣に移動しようとしたが、香奈に服を引っ張られる。

 

「ここだよ。私はアドバイスとかするだけで選ぶのは碧だからね?」


「わかってる」


「碧、どっちがみっちゃんに喜んでもらえるかの勝負しようよ」


「香奈も用意したのか?」


「もっちろん! 晃太も用意したんだよね?」


 香奈がそう尋ねると晃太は、頷いた。2人も用意するとは思わなかった。けど、瑞季、喜ぶだろうな。




 瑞季へのプレゼントを買った後、俺達は、フードコートで昼食をとっていた。


「碧、喜んでもらえそうなの買えたか?」


「まぁ、うん。喜んでもらえると思う……」


「あれあれ~? まさか自信なし?」


 自信なさが顔に出ていたのか香奈は、もしかして勝ったかもと思い始めていた。


「自信は……まぁ、ある」


「ふ~ん、けど、碧が選んだアクセサリー見たけどあれは喜ぶね」


 香奈からそう言われて買ったものに自信が持てた気がした。


 昼食を食べ終えた後、晃太は、何か思い出したのか香奈と小声で話し出す。


 何を話しているんだろうと思っていると晃太が俺に話しかけてきた。


「なぁ、香奈が前に言ってた話覚えてるか? 露崎さんが男の人といたってやつ」


「あ、あぁ、覚えてるよ……それが?」


「その男って碧だったりする?」


「……どうしてそう思ったんだ?」


「昨日の様子を見てそうかなと。香奈もその男のが碧だと思わないか?」


 晃太が彼女にそう問いかけると香奈は、うんうんと頷いていた。


「よく見たら後ろ姿が凄い似てるのよね。碧とみっちゃん、付き合ってるの?」


「付き合ってない。友達だ」


 ハッキリと言ったつもりが、それが逆効果だったらしく香奈は、ニヤニヤしながら肩に手を置いてきた。


「友達だって宣言してるところからして怪しいんだよ、碧くん。私達友達でしょ? 付き合ってるなら付き合っているとハッキリ言ってくれなきゃ」


「いや、ほんとに付き合ってないから。晃太もそうだが、香奈も急にくんづけするな」


「え~いいじゃん。昨日、みっちゃんが碧くんって呼んでたし」


 呼んでた? あれ、そう言えば下の名前で呼ぶとは2人でいる時だけって決めてたけど昨日、晃太と香奈がいる前で普通に呼んでたな。


「あっ、もしかしてくん付けするのはみっちゃんだけがいいから私には呼ばれたくないってこと?」


 頬をツンツンしながら聞いてくる香奈に俺は、違うと否定する。


「ズルいぞ碧。ツンツンされるなんて」


「晃太もやってあげるよ~」


 2人の謎の時間が始まり俺の居心地が悪くなる。


「香奈にツンツンされても何も嬉しくない。イチャイチャするなら俺がいない時にやってくれ」


「わかりましたよー。じゃ、みっちゃんの誕生日当日、碧の家集合ね」


 イスから立ち上がってそう言うが俺は、すぐに訂正する。


「まだ俺の家だと決まってないから」






***







「で、瑞季の誕生日会のことなんだけどさ俺の家でやるんだけどいいか?」


 夜、ビデオ通話で瑞季にそう伝えると嬉しそうな表情をした。


『あ、碧くんの家にいいんですか?』


「親から許可もらってるし大丈夫だ」


『そうですか……』


 家に行けると思い喜んでいたがなぜか彼女は急に不安そうな顔をする。


「どうした?」


『えっ……?』


「なんかあったなら相談乗るけど……」


『いえ、何も困ったことはないです。ただ、誰かに祝ってもらえたことがないので誕生日会を開いてくれるのはなんと言うか……とても不思議な気持ちです』


 一緒に過ごしていく時間が増えて話さなかった時よりかは彼女のことが知れたと思っていた。俺は、彼女のことをまだ半分も知れていない。 


「じゃあ、これからは俺が毎年祝うよ。付き合いが有る限り」


『ありがとうございます。では、碧くんの誕生日も必ず祝います。付き合いが有る限り。ですから誕生日教えてください』


 そう言えば彼女には教えてなかったなと思い、俺は、誕生日を教える。


「8月3日」


『わかりました。ちゃんと覚えておきます。碧くんと出会ってから私が私でいられるようになった気がします。碧くん、これからも私の側にいてくれますか?』


 画面越しだが、彼女の真っ直ぐな視線に見つめられ俺は、見つめ返す。


「もちろん。俺は、露崎瑞季の側にいる」


 彼女を異性として好きとか、友達とか関係なく俺は、彼女を1人にはしたくないと思った。俺が近くにいて彼女を支えてやりたいと。


 








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