第4話 友達でも膝枕しないよ
別の日の放課後、帰ろうとすると掲示板のところで背伸びをしている露崎を見つけた。
「何してんの?」
「あっ、鴻上くん。このポスターをこの上に貼りたいのですが私の背では届かなくて……お願いできますか?」
「了解、ここでいいんだな?」
ポスターを後ろからひょいっと取り上げ俺は、そのポスターを掲示板に画鋲で留める。
「ありがとうございます」
「頼ることにしたんだな」
「まぁ、はい……鴻上くんだけですけど」
「えっ、俺だけ?」
「そうですけど……。急に全員を信用するのは無理です。気を許せる方は今のところ鴻上くんだけです」
俺だけという言葉に俺は少し浮かれてしまった。特別扱いされたようで。
「そう、なのか……」
「そうです。あっ、私は教室に戻りますので」
そう言って彼女は、立ち去っていった。
***
「なるほど、話す度に瑞季ちゃんは君に懐くようになったのかぁ~」
俺が露崎と初めて話した日の出来事を長谷部さんに話したのはいいが、どこに露崎が俺に懐くようなきっかけがあったのだろうか。
「あっ、これいただきます」
膝には露崎が寝ているため起こさないよう気を付けながら用意してもらった温かい紅茶を飲む。
「うん、どうぞ。瑞季ちゃん起きそうにないし、これは私が飲んじゃおうかな」
起きた頃には冷めていると思うので長谷部さんは露崎の分を飲み始めた。そして寝ている露崎をスマホで撮った。
「長谷部さん何してるんですか?」
「可愛い瑞季ちゃんを撮ってるだけよ」
「後で怒られてもしりませんよ……」
「大丈夫、大丈夫。あっ、おきになさらずいつも通りイチャイチャしてもらっていいのよ」
私はそんな2人を鑑賞するだけだからと付け足してきた長谷部さんはそう言ってニコニコとこちらを見てくる。
「露崎とは友達なんでしません」
「友達でも膝枕しないよ」
「……そうですよね」
俺と露崎の関係って何だろう。友達にしては恋人みたいな距離感でいることが多いし、露崎にこうされているのは悪くないと思う。
「あっ、起きるんじゃない?」
こちらをずっと見ていた長谷部さんにそう言われ下に目線をやると露崎が小さな声で何か言っていた。
「露崎?」
「んん~」
ゆっくりと体を起こし、まだ寝起きなのかぼっーとしていた。
「30分くらい寝てたぞ」
「……こ……鴻上くん!?」
意識がはっきりとしてきたのか露崎は、バッと俺から離れた。
彼女は、俺の近くにいることからして寝ている間に何かおかしなことをしてしまったのではないかと思ったのか顔が赤くなっていた。
「わ、私は何を!?」
「いや~それはもう寝てる間に鴻上くんが瑞季ちゃんにあんなことやこんなことを───」
「長谷部さん! 俺、何もしてませんでしたよ!? 見てましたよね!?」
長谷部さんのせいで露崎は、先程まで俺にべったりだったが、距離を取られた。
「誤解だ、露崎。俺はなにもしてない。肩にもたれ掛かった後、露崎が俺の膝で寝始めただけだ」
「ほ、本当ですか?」
「あぁ、ほんと───」
「いやいや、嘘はダメだよ鴻上くん」
あー、もうせっかく誤解解けそうな雰囲気になってるのに長谷部さんのせいで露崎困ってる。
「露崎、ほんと何もしてないから」
「わかってます」
「信じてくれるのか?」
「信じるも何も鴻上くんのことは信用していますから」
ニコッと笑うその笑顔に俺は、ドキッとしてしまう。
「すみません、鴻上くん。寝るつもりはなくて……。私こそ寝ている間に何かしていませんでしたか?」
「大丈夫だ。ぐっすりと寝ていただけだから」
「そ、そうですか……」
安心したのか露崎は、ほっとしていた。
「私、そろそろ帰りますね。もう少し一緒にいたかったのですが、私が寝てしまったせいで……」
カバンを持って露崎は、残念そうな顔をする。
「また会えばいいだけだ」
「そうですね。光さん、今日はありがとうございます」
「いえいえ~甘い時間、ご馳走さまです」
長谷部さんの謎の発言に露崎は、首をかしげていた。
「鴻上くん、また明日」
「あぁ、また学校でな」
露崎が階段を降りていった後、俺も帰る準備をする。すると、長谷部さんはスマホを持ってこちらに来た。
「そう言えばいつも2人は何してるの?」
「何とは?」
「いや、瑞季ちゃんに誰にも邪魔されない2人で話せるところがないかって相談されたからさ……」
「……普通に学校での話をしているだけですよ。気が許せる相手が俺しかいないみたいで彼女の話を聞いているって感じですかね」
友達として一緒にただ同じ時間を過ごしているだけ。場所を決めてそこで話すのは俺が露崎と話しているところを見られてしまえばいろいろとめんどうなことになるからだ。
「へぇ~。ねぇねぇ、連絡先教えて。いいものあげるから」
「いいものですか?」
「うん、いいもの」
よくわからないが、長谷部さんと連絡先を交換するのだった。
***
「ん? 長谷部さんから……」
寝る前にスマホを見ると長谷部さんから写真が送られてきていたので通知をタップした。
「これって……」
送られてきた写真は、長谷部さんがあの時撮っていた写真だった。
自分の膝で寝ている彼女の姿はとても可愛らしく、俺は保存ボタンを押すのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます