37話
周りに気付かれていない様子から、赤い光もこっちの世界の人間には見えないらしい。
「せっかく、今朝縫ったのに……ぐすっ。もう斬らないって言ってたのに……」
「いや、本当に悪かった……。でも、こうしないと勝てなかったんだよ。とりあえず、これを着てくれ」
俺は自分のカッターシャツを脱いで、射奈に渡す。
「二人とも、大丈夫ですか? 赤い光が見えたので急いで来ました!」
「その声は……盾石か?」
「はい! 剣賀くんですね?」
「待て……お前ブラデビルじゃないよな?」
声だけで判断する事に、俺は若干のトラウマを抱えている。
「試しに卑猥な単語を浴びせてくれてもいいですけど?」
「いや、大丈夫だ……」
「射奈〜、いる〜? さっき、射奈の悲鳴が聞こえた気がしたんだけど」
「あ! マニルちゃん! ここです! ここにいます!」
「あ〜よかった〜! 赤い光が見えたけど、剛に変なことされなかった?」
「されまし──」
「よし! 後は麻帆だな! 麻帆はどこにいる?」
麻帆を探すフリをして、言葉を遮る俺。
麻帆も名前順は後ろの方だから、近くにいるはずだ。
「麻帆〜」
「麻帆さーん!」
「麻帆ちゃーん!」
「バカー!」
「おはよー……皆。……え! 暗! どうして!」
流石、麻帆。今の今まで寝ていたようだ……。
「おい、勇者ども! 一体どういうつもりだ!」
前の映像が、俺と盾石のファミレスのシーンから放送室にいるゴブリーダーの映像へと切り替わった。未だにゴブリーダーの両肩には、麻帆による魔法の花が綺麗に咲いている。
周りの生徒は、何が何だか分かっておらず困惑している様子だ。
「こ、これは、お前達の仕業なのか!」
ゴブリーダーがそう言うと、映像がまたしても切り替わる。
校庭中の砂が真ん中に集まり大きな何かを形作ろうとしている映像だ。
「『テラ・サーレム』だ……。敵味方見境なく破壊しようとする恐ろしいモンスター……、お前たちが召喚したんだろ!」
俺たちがモンスターを召喚? 何言ってるんだ、こいつ?
「今の魔王様には、こいつを召喚するほどの魔力はない! お前らの所のバカな魔法使いがやったとしか考えられないのだ!」
映像を見ると、そのテラ・サーレムとやらの顔が丁度完成した所だった。
ゲームやアニメでよく見るゴーレムに見た目はそっくりだ。違うのは砂で出来ている所くらいか。にしても、こんな恐ろしいモンスターを麻帆が?
いやいや、ないない。
麻帆がそんな召喚魔法なんて、大層なもの使えるわけ、
「あ! 私の『サーレム』だ!」
「…………」
「これ何の映像ー? 今、皆で何してたのー?」
「……麻帆」
「ねぇ、これ誰が流してるのー?」
「お前……このゴーレムみたいな奴を知ってるのか?」
「え? だって、私のモンスター図鑑に書いたやつだよ!」
「そのモンスター図鑑って……魔法を使って書いたのか?」
「使ってないよ!」
「そうか……それなら」
「図鑑のルーズリーフは魔法で出したけどね!」
「やってくれたなぁぁぁぁぁ! 麻帆ぉぉぉぉぉ!」
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