15話

 LINEグループ名:ABILITIES


 剣賀『おい、起きてるか』

 麻帆☆『やっほー!』

 剣賀『麻帆以外は?』

 マニル『今、お風呂だよ〜』

 剣賀『射奈はどうだ?』

 マニル『剣賀のエロ』

 マニル『ごめん笑 今のはジャムだから』

 剣賀『射奈はまぁいいか、後から全部読んでくれ』

 麻帆☆『今日は満月だね!』

 マニル『月見したーい』

 麻帆☆『ウオーン!』

 剣賀『今日、学校で巨大なナメクジが出た』

 マニル『狼男って、人間かな? 動物かな?』

 剣賀『おい! 聞け! 今日、巨大ナメクジが出た!』 

 マニル『へ?』

 麻帆☆『夜ご飯食べ過ぎたなう』

 剣賀『これマジなやつね』

 マニル『剣が頭にでも当たった? 笑』

 剣賀『今日の放課後に、教室で巨大ナメクジに襲われたんだよ』

 麻帆☆『襲われるの好きだね!』

 マニル『ナメクジきらーい』

 マニル『何考えてるかわからないし〜』

 剣賀『お前ら、真面目に聞けよ!』

 麻帆☆『ごめんちゃい』

 マニル『はいはい、でっかいナメクジが出て、それで? 笑』

 剣賀『だから、そいつが俺たちのクラスの窓ガラスを割った犯人だったんだって』

 麻帆☆『画像送って〜!』

 マニル『嫌だ〜! 見たくな〜い!』

 射奈『すみません! お風呂入ってました!』

 剣賀『全員揃ったか』

 マニル『剣賀お風呂に興奮するな』

 マニル『ごめんごめん笑 今のもジャム』

 射奈『ジャムちゃん、携帯操作出来るなんて賢いですね!』

 剣賀『真面目に聞いてくれ』

 マニル〈画像を送信しました〉

 麻帆☆『あ、大泣きしてる射奈』

 射奈『え! いつの間に撮ってたんですか?』

 麻帆☆『あ! ナメクジってチョコバナナみたいなやつー?』

 マニル『ごめん、ジャムが色々と邪魔してくるの笑』

 剣賀『おい! これすぐにフォルダから削除しろ!』

 射奈『私からもお願いします!』

 剣賀『俺が射奈の前に立ってるから、色々と誤解されそうだろ』

 マニル『射奈、ごめん! もう手遅れかも』

 射奈『え? どういう事ですか?』

 マニル『多分、剛が射奈の弓道着姿でエッチなことするために、もう保存してる』

 剣賀『してねぇよ! 適当な事言うな!』

 射奈『今から剛くんの家の方向に包丁飛ばしていいですか?』

 麻帆☆『無視しないでよ〜』

 剣賀『そしたらお前の力を学校にバラして、弓道の大会に出られなくするからな!』

 マニル『うわ、ひど〜い』

 射奈『えぇぇ! やめてください! ごめんなさい! 友達じゃないですかー!』

 麻帆☆『そうだそうだ〜!』

 マニル『そういえば、何の話だったっけ♪』

 剣賀『俺も風呂入ってくるわ』



「はぁ……」


 俺はシャワーで髪を濡らしながら、ため息をついた。


 LINEで真面目に報告しようとした俺がバカだった。


 麻帆が作ったグループだが、普段は俺を除いた三人がやり取りしているだけで、俺が参加する事はほとんどない。

 グループ名の考案主はマニルで、大好きなアメリカのヒーロー映画っぽい響きだからという理由らしい。和訳すると『能力者たち』だ。まんますぎるだろ。

 盾石にも声をかけて、グループに招待するべきだろうか……。素直に入るとは思えないけど。


 私はあなたたちと違って、使命を持って行動しているので結構です! とか言いそうだ。


 橋の上での変な質問も、教室での俺への質問も今ならなんとなく理解出来る。

 ライバルとか言ってたし、俺がどういう志しで、どれほどの力があるのか把握したかったんだろう。

 それでいざ確かめてみると、メディアの勇者くんとのギャップにガッカリしたってとこだな。

 盾石は力を世のために活かそうとする物語の中の勇者みたいな人間で、俺の正反対にいる。


 よし、やっぱりグループに招待するのはやめておこう。


 シャンプーを左の掌に数回プッシュし、泡立てる俺。


「とりあえず、色々と対策を考えないとな」


 頭につけると、メンソールがスースーとして気持ち良い。

 良い香りがするシャンプーは、女子の髪の毛から匂ってこそ真価を発揮すると個人的に思っているので、俺は爽快感を重視している。


「いてっ! な、なんだ⁈」


 気配を感じる間もなく右手の剣に衝撃を受け、俺は左側に倒れた。

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る