逢瀬


由美は帰途の電車に乗り込む。車内は空いていて腰を掛ける。


由美は下半身に違和感を覚える。


たっぷりと注がれた先ほどまで交わった少し乱暴な男の体液が体にたくさんたくさん残っている。


湿り気と体液の匂いが強い。それにまた体を登る疼きが繰り返す。


彼は私をきくばかりで、自分の事は何も語らなかった。


しかし由美は気にならない。疼きと匂いと湿り気が心地よかった。


すーっと眠りに落ちた。




俺は翌る日もテレクラにいた。コールを争奪するも気持ちが乗らない。


こんな時に限って通話が通る。ラウと名乗る若そうな女性だった。


待ち合わせして私鉄の改札で落ち合う。美しく溌剌とした美人だ。




ラウは美しく若々しかった。


しかし、昨日たった一度会った由美に強く後ろめたさを感じる。


由美は既婚者で乱暴した手前、次回確実に会えると限らない。


ラウはまさにここにいて誘えばセックス出来るだろう。でも俺はラウを抱かずに帰った。


俺は昨日由美に全部出して、空っぽだった。




その日から俺はテレクラをやめた。


由美に注いで空っぽの俺は今度由美に会うまで、貯めなければならないと感じた。


自慰行為もやめて貯めを堅守した。




貯まって、破裂寸前で由美の日がやってきた。


私鉄の改札からJRまで挨拶もそぞろに由美の手を引いた。


ホテルに入って服を脱がして由美の裸体を抱きしめる、


透き通る肌を乱暴に掴みいきり立つがまま由美の中に入る。




由美の吐息が快感を表す。溢れる由美に貯めた精液を流し込む。


由美は射精に呼応して体を震わせる。


空になるまで貫いて射精した。


由美は腰のあたりから発汗して俺が空になる頃には長い髪が乳房に張り付いた。


うつ伏せに果てた二人は深く眠る。




熱いシャワーで正気に戻る俺、浴室から出ると由美は服を着ていた。


洗面台で髪を乾かし身支度を整える。俺は由美に話しかけた。


この日のために貯めたこと、強く愛を感じるセックスがこれ程自分を空っぽにできると知った喜び。


俺が由美を欲しいと心底思っていること。


そして名前と仕事。




由美は薄く発光して穏やかな笑顔で傍にいる。




俺の名前は安倍秀樹


職業は医師


病院の院長をしている。


親の病院を受け継ぎ身の入らない日々を送っていた。


夜勤の当直をして昼間はテレクラに入り浸。


しかしながら由美と会えるなら生き甲斐を得られるだろうと。




俺にもわかっている。由美は既婚者で俺の物言いが、どれ程愚かで身勝手か、しかし理屈にならない勢いで由美と会う事を切望した。




由美も俺と会いたいと言ってくれた!


俺はまた、幸せの高見を知った。




由美は私鉄の改札まで秀樹に寄り添った。胸を押し付け、


秀樹の手が自分の腹に当たるたびに疼きが背骨を登る。


秀樹と改札で別れてプラットフォームの端っこのベンチで、


まだ温かい火照った体を包む秀樹の匂い、腹に溜まった秀樹の精液、


何度も訪れた絶頂にやまれぬ疼きを感じていた。


由美もまた10日後の再会を火照りと共に待つのであった。




不思議に俺は10日の貯めを苦にしなかった。むしろ由美以外と交わる事を嫌った。


一方病院の仕事は次第に昼間となり、夜をうろつく宿直は減った。


他者と自然に朗らかに接し、充実感 使命感まで現れた。


自慰行為を断じたからなのか、心地よかった。




盛夏が訪れる頃、俺と由美はセックスの後に出掛けるようになった。もっぱら涼しい所を選んだ。


デパート、美術館、映画館。


目的はなく、俺は腹に精液を湛えた由美を傍に、他人の狭間をうろつくことが快感だった。


由美も秀樹の子種を宿した体を薄着越しに秀樹に押し付けて疼いた。


よい夏であった。




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