第120話 イチャイチャなんて……
八月に入り、私は以前に椿さんと約束した水着を買うために、真夕さんも入れた三人でショッピングモールに来ていた。
夏休みということで、店内には学生さんが多い。
「さあさあ那月さん! 早く水着を買いに行きましょう!」
「つ、椿さん。あんまり引っ張らないでください」
椿さん……なんでこんなにテンションが高いの? それにお肌も出して……。
今日の椿さんはTシャツにミニスカート、そしてヒール付きのサンダルとシンプルなコーディネートなんだけど、椿さんは可愛くてスタイルもいいからすごく周りの目をひいている。
私はロングのワンピースにジレを合わせた落ち着いたコーディネートで、真夕さんはジーンズにTシャツと、シンプルなボーイッシュコーデだ。
いつもハイテンションな人だけど、今日はいつも以上にはしゃいでいるような……。
「祐くんを悩殺する水着、早くしないと売り切れちゃうじゃないですか!」
「の、のうさ、つ……!?」
椿さんの口から予想だにしなかった言葉が飛んできて、私の顔が一瞬で熱くなってしまった。
「とかなんとか言って、本当は柏木さんが那月さんの水着を見たいんじゃないのかな?」
私たちのちょっとだけ後ろから、落ち着いた声で椿さんにツッコミを入れる真夕さん。
実はプールに行く約束をした次の日、私は真夕さんも誘いたいと祐介くんに伝えたら祐介くんはそれを快諾してくれて、その日の夜に椿さんに連絡をしたら、椿さんと新くんも「いいですよ」と言ってくれたので、真夕さんをお誘いした。
「あはは。バレました?」
「そりゃバレるさ。なんたって私もだからね」
「ま、真夕さんもですか!?」
わ、私の水着って……そんなに見たいものなのかな?
「当然ですよ那月さん! 男はもちろん、この世には那月さんの水着姿を一目拝みたいと思っている女性で溢れています!」
「ちょっと大袈裟すぎません!?」
それをさも当然のように言ってのけるって、統計でも取ったの!?
「でも仁科さんの言う通りですよ!」
「つ、椿さんまで……」
「グラビアモデルも真っ青になるほどの抜群のプロポーションに、そこらのアイドルなんて相手にならないほどのめちゃかわ綺麗な容姿! 加えて性格も完璧! そんな那月さんの水着姿……是非とも見たい!」
「あ、エロいやつだとさらに見た───」
「そんなもの着ません!」
き、今日買いに来たのはプールで着るための普通の水着なんだから、真夕さんの言ったえっちな水着なんて着ていけないよ!
「なるほど……えっちな水着は祐くんだけってことですね?」
「な、なんで!? ……というか、椿さん私の気持ち───」
「もちろん気づいてますよ」
私の祐介くんへの気持ちを知ってるのは、真夕さんと真夕さんのご両親、そして喫茶店『煌』でよくおしゃべりをするシゲさんや真鍋さんたちだけだったのに……。
「だって、プールのお誘いした時に、電話越しで祐くんとイチャイチャしてましたもん」
「えぇっ!?」
い、イチャイチャって……え!? イチャイチャしてた!?
「ほぉ……それは是非とも詳しく聞かせてほしいですね那月さん」
ま、真夕さんも興味を示しちゃって、すっごいにやにやして私を見てる。
だ、だけど本当にイチャイチャなんてしてないし!
「い、イチャイチャなんてしてません! 祐介くんの膝を叩いていただけです」
「祐くんが那月さんを見ていたあとですね」
「それを世間ではイチャイチャしてると言うんじゃないんですか?」
「そ、そうなのですか!?」
真夕さんがさらっと言っちゃったから、私は本気で驚いた。
え? あれもイチャイチャに入るの!?
でも私たちは───
「わ、私たち、まだお付き合いしてないですよ!?」
付き合ってもないし、それなのにイチャイチャしてるってなるのかな?
「付き合ってなくても自覚なくイチャイチャしてる人はいますよ。私とつーくんと付き合う前からわりとボディータッチ多かったですし、手も繋いだりもしてましたから」
「本当ですか!?」
「その手の話は、マンガやラノベでごまんとありますし」
「そ、そうなんですね」
椿さんと新くんはお付き合いする前からとても仲が良かったんだ。付き合う前から手を繋いだこともあるだなんて……。
…………あれ?
わ、私も祐介くんと手を繋いだことあるーーー!!
忘れてた……というか、ドキドキするから思い出さないようにしてたんだけど、確かに私と祐介くんは手を繋いだことがある! しかも私から恋人繋ぎをしてた!!
「あれ? どうしたんですか那月さん。いきなり顔が真っ赤になりましたけど……」
「へっ!? い、いや、あの……な、なんでも───」
「今度は祐介くんとのどのことを思い出してドキドキしてるんですか?」
は、バレてる!? 嘘! 私、まだなにも言ってないのになんで祐介くんとのことってわかったの!?
「ゆ、祐介くんのことだとはわからないじゃないですか!」
「いやいや、今の那月さんがここまで赤面するのって、祐介くん絡み以外ありませんもん」
「う……」
「あはは! 那月さん可愛い~! それでそれで? 何を思い出したんですか?」
うぅ……これは、とても言い訳が通用するとは思えない。
私は観念して祐介くんと手を繋いだことを話すと、二人はその話にすっごく興味を示していて、私は全部話した。
それからお店に到着するまで質問攻めにあった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます