第92話 今以上のパートナーに

「はあぁぁぁぁぁーーー……!」

 祐介くんが廊下に出て、足音が小さくなったのを確認し、私は思いっきり息を吐いた。

 さっきの私、変じゃなかったよね? 普通だったよね!?

 祐介くんが帰ってきて、足音が大きくなるにつれて、私の鼓動も早く大きくなっていって、なんとかこのドキドキを祐介くんにバレないようにしなきゃって思って、私は祐介くんがここに入ってくる直前に笑顔を貼り付けた。それはもう思いっきり。

 おかげで祐介くんに私のドキドキは伝わらなかったみたいで一安心なんだけど……。

「顔が、痛い……」

 表情筋に力を入れすぎたせいか、表情を戻したら顔の筋肉がつったかのように痛い。

 これ、祐介くんがまたここに戻ってきても、同じことをするのは無理そう……ご飯を食べるから、さっきのやり取りの数十倍の時間一緒にいるし、祐介くんもさすがに不思議に思っちゃうだろうし、何より笑顔のままだと食べにくい。

 祐介くんがお風呂に入っている間に次の対策を考えないと! むむ、む……。


 ……あれ? お風呂?


「……!」

 祐介くんが、好きな人がお風呂に……裸になっている場面を想像してしまって、私の顔は一瞬で熱くなってしまった。熱出てた時よりも熱くなってる気がする。

「ち、違うよ! えっちなことなんて考えてないから!」

 誰もいない空間で、誰に言い訳をするわけでもないのに、私は大声を出してしまった。

 私の悪い癖だぁ……。

「で、でも……」

 ゆ、祐介くんって、鍛えてるのかな?

 太ってるわけでもないし、お腹ももちろん出ていない。

 けど、私は祐介くんの衣服の下を見たことがない。

「私は見られたこと、あるのに……」

 私が悪いとはいえ、この家で暮らし始めてすぐ、私は祐介くんに服の下を見られたことがある。ナイトブラをしていたから、大事な部分は見られてないけど……。

「そ、そうだよ。私だって、見る権利は……」

 私だけ見られたのに、祐介くんが見せないのはフェアじゃないよね!?

 わ、私たちは寝食を共にするパートナーなんだから───

「ぱ、パートナー……!」

 私は自分で口にした言葉にまた顔が熱くなった。

「ふうぅ~……!」

 そして変な声を出して、その場にしゃがみこんでうずくまった。

「……祐介くんと、今以上のパートナーになりたい」

 なんかどんどん変な方向に考えが傾いちゃってる。切り替えないと。

「平常心、平常心……」

 私は心をおちつけさせながら、祐介くんがお風呂から出てくるのを待ったんだけど、好きな人の入浴シーンを想像してしまい、心を落ち着けさせては悶々とするを繰り返してしまった。

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