第7話:ちやほやされるの気持ちいいいいいいいいい!!!


「スマホをここに置いてっと……。よし、これで配信準備は完了。それじゃミヒロちゃん、配信初めていいよ!」


 全く状況が掴めないんだけど、どうやら私は一部の層から絶大の支持を受けたらしい。チャンネル登録者数も「0」だったのが、今はもう四桁……あ、一万人いった! す、すごい……見ればみるほど数字が伸び続けてる。


 こ、これってこれからの配信は、たくさんの人に見てもらえるかもしれないってことだよね。うう、ちょっと緊張するな……うまく喋れるかなぁ?


「ミヒロちゃん、これから来る視聴者はめっちゃくちゃ民度が低い奴らだと思うから、辛くなったらすぐにやめていいんだよ!」


「……大丈夫です、カズサさん。せっかく手に入れたチャンス、私はここで掴みとります!」


 そう、せっかく手に入れたチャンス。少し怖いけど、たくさんの人が見てくれる機会なんてそうそう得られるものじゃない。

 ここで私がみなさんのことをしっかり楽しませられたら、グループの人気も上がって事務所に恩返しもできる。それに……


 いっぱいチヤホヤしてもらえるはず!!!!


「な、なんて向上心の塊……わ、私感動したよミヒロちゃん! 頑張ってね、応援してる!」


「はい、頑張ります! そ、それじゃあ配信開始っと……ひゃあ!」


 配信を始めると同時に、どんどんと視聴者数の数字が増えている。え、えっと、いち、じゅう、ひゃく、せん……い、今4000人ぐらいの人が見てる!?


 す、すごい……こ、こんなたくさんの人が私の配信を……はっ! か、固まってる場合じゃない、あ、挨拶しないと!


「み、みなさんこんミロ〜! た、たまゆら学園の清楚担当、「磯部ミヒロ」です!」


 な、なんとか挨拶は言えた! コメント欄の人たちはどんな反応をしてるのかな、どれどれ……。


———

「清楚(自称)」

「えっど」

「こんミロ〜(笑)」

「ほんとに清楚ぶってて草なんよwwww」

「やべえ、俺らのジャンヌは実在してたわ」

「すまん、素直に好み」

「この可愛い女がベルゼブブグーパンで倒したとかま?」

「時代は磯部ミヒロ、いっさん涙目敗走なんよwwwww」

———


 うわぁ、い、いっぱいコメント来てる……可愛い女……素直に好み……う、うっへへへへへへへへへへへへ! そ、そんな褒めてくれるだなんて嬉しくて笑顔がいっぱい溢れちゃうよぉ〜。


「みなさんいっぱい褒めてくれてありがとうございます〜♪ で、でも私は清楚なんです、みなさんそこは勘違いしちゃダメですよ」


———

「あくまで清楚を突き通すのか……」

「清楚(自称)」

「褒められて素直に笑顔になるのは清楚要素やな」

「可愛い」

「俺らのジャンヌはいついかなる時も美しくて可愛いのだ」

「えっど」

「踏まれたい」

「ジャンヌ、お茶目が過ぎますぞ!」

———


「うー、みなさん私のことを清楚だと信じてくれないんですね。なら今からみなさんの質問に答えて、私が本物の清楚だって信じてもらいます!」


———

「彼氏いんの?」

「お前は男と絡みないよな……?」

「ベルゼブブをなんであんな簡単に倒したんだ?」

「素直に好みです。どうやったら会えますか?」

「なんで配信やろうと思ったん?」

「男と絡まないでください」

「好きな食べ物は?」

「パンツの色聞きたい」

———


 な、なんかちょっと変わった質問が多い気がする。でもせっかくもらった質問なんだもん、しっかり答えて私が清楚だって信じてもらおう!


「みなさんいっぱい質問してくれてありがとうございます! えーっと……好きな食べ物は「毒蛇の佃煮」です! あ、もちろん毒は抜いたやつですよ。おばあちゃんの得意料理で、すっごく美味しんです!」


———

「は?」

「は?」

「清楚(自称)」

「毒蛇の佃煮ってなんだよw」

「明らかに俺らとは別の世界の人間だ」

「ばあさんなんてもん作ってんだよ」

「これは清楚笑」

———


「え、みなさん毒蛇の佃煮食べないんですか!? び、びっくり……」


 あ、あれ? みんな食べてるものじゃないの? あの独特な苦味がすごくくせになって美味しいのに。

 い、いやいや。別の質問に答えればきっと大丈夫。そうだなぁ……。


「次の質問行きますね! えーっと……配信をやろうと思ったきっかけはですね。私、カモライブとかだいさんじの配信が大好きなんです! だから、自分もああなりたいなって思って始めました!」


———

「ならお前も男と絡むのか!!! クソがっ!!! 裏で男とご褒美FPSしてんのかよ!!!!」

「ここは普通やな」

「流石に全てイカレアマではないか」

「とか言って、本当はチヤホヤされたいだけなんだろ!」

「カモもだいもお前なら超えられる!!!」

「ジャンヌ、カモもだいも潰しましょう!」

———


「え、えへへ、鋭い人もいますね。正直、チヤホヤされたい気持ちもあります」


———

「なら俺たちが褒めてやる。だから男と絡むな」

「ミヒロちゃん可愛いいいいいいいいいいいいいいいい!!!」

「ダンジョンでの活躍しびれました! またみたいです!」

「みーちゃんが一番好きだわ」

「俺らのジャンヌ、希望の星!」

「世界で一番可愛い!」

「正直、一生推す」

———


「う、うっへへへ……ほ、褒めすぎですよみなさん……う、うっへへへへへへへ」


 ああ、コメント欄がいっぱい私のことを褒める内容ばっかり……自己肯定感が高まる……ああ、き、気持ちいい、気持ちいいよぉ……。


 チヤホヤされるの、気持ちいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!


———

「めちゃくちゃ顔に出てて草」

「本能に忠実なやつだ」

「可愛い」

「なおダンジョンでは」

「褒めまくってダメにしてぇ」

「ところでダンジョンにはいつ行くん?」

———


「え〜みなさんいっぱい褒めてくれるので、お礼にダンジョン配信しちゃいましょうかなぁ〜うっへへへへ〜みなさん言ってほしいダンジョンとかありますかぁ?」


———

「うおおおおおおおおおおおきたああああああああああ!!!」

「デーモンズ・クレイドルいけ」

「終焉の魔窟!!!」

「死の迷宮キボンヌ」

「やっぱ蟲穴の地底要塞だろ!」

「オクタマ行け」

etc……

———


「いーっぱい案を出してくれてありがとうございます! そしたら〜あ、コメントしてもらったとこ、全部行っちゃおうかな!」


「「ゔぇ!?」」


 ——ミヒロは知らなかった。コメントで挙げられたダンジョンは、全て危険度EX級の踏破不可能と言われたダンジョンであることを。

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