断ち切れないルーティーン

読み切り

「カンッカンッ」と金属がぶつかり合う音が聞こえる。工事の音だろうか？ 最近では、この美しい音で目を覚ますことが日課になっていた。スマホを手に取ると、時刻は12時を回っている。起き上がろうとするが、体が言うことを聞かない。気づくと、スマホのロックは解除され、YouTubeが開かれていた。これから仕事をしなければならないのに、YouTubeはとても魅力的だ。少しだけ構ってやろう。

20分ぐらい経っただろうか、時刻を確認すると、イギリス人が優雅にアフタヌーンティーを楽しむ時間になっていた。いつの間にかタイムスリップしてしまったのだろうか。私は重い腰を上げて、デスクに座る。しかし、手が鉛のように重い。先ほど手を酷使しすぎたのかもしれない。こんな状態で仕事をするのはナンセンスだ。仕方ない、情報収集を始めよう。きっとこれも仕事のうちだろう。そして、私はインスピレーションを求めてインターネットを探し回った。

気が付くと周りが暗くなっていた。サラリーマンたちが帰宅する時間だ。何故だろうか彼らのことを考えると、胸が締め付けられる。私の心臓の鼓動が重く速くなっていく。これが恋というものなのだろうか？ この不快感を抑えるために仕事を始めた。それから数時間が経ち、食事を取っていないことに気が付く。朝食を口にした。1日1食で済むなんて、驚くほどエコな生活だ。もしかしたら、これが最近話題のSDGsというものなのかもしれない。私は、誇らしげにデスクに戻る。

椅子に手をかけるも、不意に動きが止まる。今日はもう寝ることにして、明日、朝早くから仕事を始めることに決めた。これほどの努力をしているのに、私の給料は0という状況に疑問を感じながらベッドに横たわる。天井を見上げ、周囲は静かな夜の中で包まれていた。滝のように、これまでの人生やこれからの人生に関するさまざまな思考が頭を駆け巡る。

いつの間にか、涙が頬を伝っていた。思考を止めるために、暗い部屋の中で手を伸ばし、スマホを探し当て安らぎを求めた。時計を見ると、もう24時を過ぎていた。明日はこそはと心に誓い、ため息と共に目を閉じた。