第6話 大規模侵攻、戦い始まり!

『終焉の書????-1章』より。支配者は語る。3人の勇者のうち1人、勇者フーランは何も知らずにただ自由奔放に生きる少女だった。だからこそ利用しやすかった。彼女は知らず知らずのうちに混乱の種を撒いていた…。


 ここは海底の国カリィン、珊瑚に囲まれた最も美しい国。そんな国で今、恐ろしいことが始まろうとしていた。

「海奥様、上陸地全箇所、兵5万ずつの準備整いました。」

「…おん」

外殻将軍とウミコブラが海奥の護衛につき、かのん達の住む街の上陸地には、前衛に海一族の二将と呼ばれる海牛率いる海牛隊と海豚率いる海豚隊、後衛には外鋏将軍率いる動く要塞の砦鋏軍という面々が配置に付く。ついに侵略作戦を開始しようとしていたのだった。この大規模作戦に兵達はザワついている。

「今回の戦は今までの戦場とは規模が違うな。」

「当たり前だ、海の国の場所が分からねぇ奴らにこの奇襲から逃れられねぇ。」

総勢訳20万を超える海底人の一斉攻撃が始まろうとしていたことには誰も気付けないのだった…。


「ねぇまさとし君。アナタこないだの事件の際もスーツを着て無かったらしいけど?危ないからちゃんと着なさい。」

一方でそう怒るように語るのは美里子だった。こないだの事件というのは、前回のウミヒメクラゲによる海底人街中出没事件である。この事件の際にまたまさとしはスーツを着ていなかったのだ。美里子は彼のことをかなり心配している。内心美里子はバイトとして雇い、スーツ開発の試験体のような扱いの3人に申し訳ないと思っていた。しかし、彼の返した言葉は、

「あー…うん、めんどくさかったんだ。許してくれ。」

「めんどくさいって、…ホントアナタねぇ。」

コイツの心配はするだけ馬鹿だと呆れ果てる美里子であった。

 それから月日は流れ、3人に美里子からの連絡が入った。今日は合わせたい人がいるとの事だ。集合地点へ向かうと3人の前には美里子と見知らぬ50代くらいの男が立っていた。

「あれが、美里子の彼氏か?」

「美里子はおじ専だったかぁ…。」

「おじ専?でも彼氏に違いないね。」

そんな事を3人で話していると、こちらに気づいた美里子ら2人は3人に向かって手を振る。

「美里子さん、その人は彼氏?」

「いや違うわよ、てことで紹介するわね。この方は赤坂さん、私のスーツ開発の前任者よ。」

「ドーモドーモ!赤坂さんダヨ。」

「ん?聞いた事ある声…あっ、雷号のウザい声っ!」

赤坂の声に驚き失礼な事を口走るかのんと、ショックな言葉に凹む赤坂。

「赤坂さんっ!…大丈夫ですか?ちょっとかのん!」

「つい口走っちゃいましたすいません。あっ、」

美里子に怒られてヘコヘコと謝るかのんはふと何かを思い出す。

「実は最近車の免許とりましたよ。最近はあんまり海底人来なかったから暇だったんですよ。」

「へぇ…じゃああれも使えるって事ね…。」

「ほう…。」

不敵に笑う美里子とかのんを横目に、赤坂が話しだす。

「美里ちゃんが赤坂マッスルスーツのデータを受け取りに行くついでに君らを紹介したいってネ。」

「マッスルスーツ?」

「ああ、君だね?まさとし君は。君のスーツを改良して持ち運びを楽にしたいってさ。」

「俺スーツ着た事ない。」

「…着てくれよ。」

またまた落ち込む赤坂だった。

 次の日、美里子の所へ3人は集まりスーツの作成工程を見ていた。

「こんな感じで…ホラ、ほぼ完成よ♡」

それはナノマシーンにスーツの設計図と本体の情報を覚えさせる作業だった。この作業を見ていた3人は、美里子の天才っぷりに圧倒されていた。

「スゲェ……、なんだコレ…。」

「何がどうなってるのか全く分かんない…」

「…」

「まさとし君、明日中には完成すると思うからね。」

「おう、ありがとう。」

本当にスーツを着てくれるのか疑う美里子。それからしばらくすると、西海岸へ海底人が数万もの大群で進行いると情報が入った。美里子たちが居るのは東側のため反対側であるが、数が数なだけあり美里子もあまり乗り気ではない。

「今回のは出なくていいわよ、まだまさとし君スーツも完成してないし。」

「マジ?ラッキー。」

「今日は休んでいいんだぁ。」

とちょっと喜んでいるかのんとひなこだったが、まさとしは何かを調べていた。

「まさとし君、何見てるの?」

と美里子が問うと、

「あぁ、コレは前のひなこちゃんの事件の時の進行の記事だよ。ちょっと気になったから調べてる。」

と答えた。3人は気になったので覗きに込む。

「書いてる記事のホラ、ココ読んでみてくれ。」

そう言われて3人は読み始める。

「「「えーと…、海底人達は、東海岸から西海岸まで真っ直ぐ走り抜けた模様。」」」

これを読んだ3人。かのんとひなこは首を傾げる(ひなこは可愛く)。しかし美里子は何かに気づく。

「あっ…コレもしかして、今回も一直線に進む奴?」

「多分そうだけど考えてるよりもっとヤバい。」

そうまさとしが言うと、美里子は青ざめる。

2人の会話について行けてないかのん達。

「どういうこと?」

ひなこの問いに対して、まさとしはこう答えた。

「西は囮で東が本命だ。」

この言葉でようやく理解するかのん。

「じゃ、じゃあ超ヤバいじゃん!」

「超ヤバいぞ。」

「超ヤバいわ。」

3人の超ヤバいに超ヤバいのか!っと理解していないひなこであった。

「至急本部にも連絡するわ!」

電話をしてみると、

「気づいてたみたい…。」

「だろうな。」

本部は街に一応避難勧告もしたとの事だ。それを聞いた美里子は、とりあえず3人を避難させることにした。


 避難所へ着いた3人。まさとしの考察は正しかったらしく、東からさっきの何倍もの兵が向かってきているという情報が入った。避難所を覗いてみると、もうかなりの人数が避難していおりいっぱいいっぱいだ。

「ひなちゃ〜ん!」

という年寄りの声がする。

「おばあちゃん!」

ひなこはおばあちゃんの所へ向かう。その嬉しそうなひなこの姿を見て美里子も

「家族の安否確認は先にした方が良さそうね。」

と言葉を零す。それを聞いた2人も身内に電話してみる。親に電話するかのんは、違う避難所に避難している事を知り安堵する。しかし、まさとしの方は慌てている。

「なんでかからない!」

「誰に電話してんの?」

「…彼女だよ。」

「え…。」

そのまさとしの不安そうな表情を見たかのんと美里子。かのんは居ても立っても居られなくなり美里子にこう言う。

「美里子さん、ちょっと外出るわ。」

「待ちなさいかのん!」

美里子の声に気づきひなこもこちらへ来た。

「かのん、どうしたの?」

「まさとしの彼女に電話が掛からないらしい。」

「マジ?助けに行かないと!」

「だから待ちなさい。」

必死に止めようとする美里子。今から外に出て彼女を見つけた所で東から来る海底人に殺されるのが関の山だろう。そう考えているとまさとしの姿が見当たらない。

「……まさか!」

まさとしは、彼女を救うために避難所から出て行ったのだった。あたふたする美里子に対して2人も

「「まさとし探しに行ってくるー!」」

と勝手に外へ行ってしまった。

「ウソぉ…。」

 朝里ぃ…そこに居てくれッ!そう願いながら自分のアパートに向かってただひたすらに走り続けるまさとし。まさとしは必死だった。俺みたいな奴にできた大切な人なんだ。お前が居なきゃ俺は…。前にはもう海底人が大勢侵攻している。

「ガァーハッハッハッ!この海牛様の前に立ちはだかる勇敢なる地上人よ、名乗りを許そう!」

牛?いや、今はそれどころじゃない!

「邪魔だァー!!」

そのままアッパーをかます。拳を受け止めた海牛だが、勢いが強くそのまま肘が顎にクリーンヒットしてしまい、海牛は倒れた。

「海牛様がぁ…一瞬で…!!」

後ろに居た海底人達は、何が起きたか分からず口をあんぐりと開けたまま動かない。…まぁいいか、それより先へ急ぐぞ。と、まさとしはそのまま海底人達を無視してアパートへ向かって行くのだった。

 一方でまさとしを探すかのんとひなこ。

「一体アイツ何処いったんだよ…。」

そう言って走り回っていると、2人の前にも目の前に大勢の海底人がこちらへ向かって来るのが見える。

「クソォ、もうこんな所にまで…。」

すると、遠くから1人の海底人が大急ぎで1番前の偉そうな海底人に向かって行くのが見える。

「海豚様ー!海牛様がマッチョな地上人にやられました!」

「何ィ!?あの海牛が!」

それを聞いた2人は、間違いない、まさとしだ!と頷き合うと全力でその海底人をとっ捕まえる。そしてその海底人に2人は

「そのマッチョは何処に行ったの!」

「さっさと答えろ!」

「ヒイィ〜!」

と脅した。

「分かりました!分かりました!だから殺さないでぇ〜!」

「早く案内しろ!」

そう言って蹴飛ばすかのん。海豚もその姿に少しの間唖然とした顔で気を取られていた。

「海豚様、大丈夫でしょうか?」

海豚もふと我に帰る。

「いやぁ、驚き過ぎて殺すのも忘れとったわ。」

「いかがいたしましょう?」

「50人そっちに回せ。必ず殺すのだぞ。」

そう海豚が支持していると、前から対策部隊のや、軍隊がまっすぐ海豚隊の方へ向かって来る。

「ヨシッ!その他の奴らはワシに続け!前の敵を血祭りにするのだぞ!」

それと同時に海鉄砲を抜く海底人達。それから鳴り響き始めた銃声、向こうでは激しい戦闘が始まったのだった。しかし、かのん達はそんな事気にしてる場合ではない。かのん達の背後から今まで戦ったことの無い数の海底人が迫って来る。

「ギャアーーッ!!、死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ!!」

やった助けが来てくれた!と2人に捕まった海底人は喜び助けを求める。

「たすけt…」ズドンッ!

「へ?」

「裏切り者には死を!」

「エェーッ!?ダズゲデェ〜!」

「「うるさい!」」

海底人はやっぱり2人に助けを求めるのであった。

 まさとしは、ようやくアパートの自分の部屋に着いた。息を切らしながら玄関のドアを開けると、そこには朝里の姿があった。

「まー君おかえり。」

「良かったぁー、ハハハ」

まさとしは安堵のあまり涙を零す。

「どうしたの?まー君。」

「凄い数の海底人が来たんだ、一緒に逃げよう。」

その言葉を聞いた朝里は、少し間を空けてからうんと頷いた。

まさとしと朝里が玄関を飛び出し避難所へ走り始めたその時、かのん達3人とバッタリ会った。朝里を見た3人の追手は驚く。

「海由里様、ご無事でしたか!」

この言葉に驚くかのんとひなこ。人の姿をしているのに、海底人から名前を呼ばれている事に戸惑っているのだ。こんな所で正体がバレてしまった事に焦る朝里に追手達は、

「海由里様どうぞこちらへ。戻りますよ、海の国へ。」

と手を伸ばす。それを見たまさとしは朝里の手を強く握りしめ、彼女に

「行かないでくれ。」

と一言。朝里もとい海由里の目的は、避難所の位置を海底人に伝えて大量の人質を捕らえることだった。これ以上の作戦継続は不可能と考えた彼女は追手の手を握った。しかしまさとしは、自分の元からする朝里の手を両手で掴み離そうとしない。

「お願いだから、行かないでくれ…!」

そんなまさとしに朝里は

「さっさと手ぇ離せッ!」

そう言って顔を蹴飛ばした。力が抜けたように倒れたまさとしの姿は弱々しく、大きな体が小さく見える程だ。その姿を見たかのんは朝里に向かって何か言いかけたが、朝里の姿を見た途端に口を閉じた。そのまま残った追手の方を向いて、

「ひなこちゃん、残り20人…。さっさと片付けるよ。」

「うん…。」

まさとしを守りながら戦うとなると、数的にもまだ勝てるか分からない状況。その時、

「グワァー!」

一気に8人の海底人が倒れる。驚く2人の前に現れたのは、美里子と対策部隊の4人だった。

「かのん、ひなこちゃん、もう大丈夫よ!」

かのん達3人を心配して美里子が助けに来てくれたのだ。隊員達はそのまま追手達を蹴散らしこちらへ向かってくる。ひなこはふと1人の隊員を見て目を輝かせる。

「王子様ァ〜〜〜♡」

驚く美里子は、隊員達に

「え、誰か知り合いなの?」

と聞くと隊員の2人が

「うーん僕は知らないな。タケちゃんは?」

「何言ってるんですか、僕はあの事件の時におんぶした子だし覚えてますよ。」

「あー、あの子か!」

「王子様ってのは多分だけど、成瀬さんですよ?」

「え、僕ぅ〜?」

成瀬さん!名前、覚えたぞー!とひなこは王子様に再会できた事への喜びと、名前を知れた喜びを心の中で気持ちを必死に抑える。その仕草の可愛さに全員が顔が緩くなる。

「とりあえず、まさとし君かついで一緒に避難所に戻るわよ!」

「大丈夫、1人で歩ける…。」

そう言ってよろけながらも立ち上がるまさとし。かのん達は避難所へ戻るのだった。


第6話 大規模侵攻、戦いの始まり!

終わり




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